2013年11月号(第59巻11号)

ピグマリオン効果

東海大学医学部付属病院 臨床検査技術科
髙梨 昇

テレビに見入っていた訳ではなく、何かをしている時に、「ピグマリオン効果」という言葉が耳に飛び込んできた。どうやらテレビでやっているクイズ番組の解答のようであったが、小生の頭の中になぜだか残っていて、何となく納得している自分がいた。ピグマリオン効果とは、ロバート・ローゼンタールによる教師の期待によって児童の成績が向上したという実験結果が基になった用語で、人間は期待されれば伸びるという期待効果をあらわしている。
教育や指導は学校だけではなく、職場においても重要であり、先輩技師は新人教育を行い、先輩技師もスキルアップに努め、上司の指導を受けている。最近では、マニュアル中心の教育・指導になっており、画一的な教育ができるようになった。ただし、昔のような自己学習はあまりみられなくなり、マニュアルに載っていないことには対応できないなど、柔軟性にやや欠けるきらいがある。しかし、職場にとっての最大の財産は人材であり、いかに育てていくかは非常に重要である。職場では、性格が異なる様々な個性を持った人が、お互いに影響し合いながら働いている。人間は誰しもが、他人の目は気になるものである。どんな人でも無視されれば内向的になり、他人や上司から期待されれば、それに応えようとして伸びていく。各人にある程度の責任を持たせ、考える機会や仕事を成し遂げる達成感、自己充足感を感じることができるような役割分担を与えることは、チャレンジ精神を育み、問題解決能力を養うことができ、将来のリーダーも発掘することできる。また、情報の共有できる組織作りと人事交流が、組織の活性化に重要と考えている。個人の性格を変えるのは難しいが、色々な考え方や違う視点でみることをアドバイスすることや職場環境の変化で目覚める人もいる。多種多様な人材の中にも多くのダイヤモンドの原石が眠っている。その原石を如何に磨き上げていくかが重要であろう。その人の強みを引き出して伸ばしてあげるような褒め上手になって「ピグマリオン効果」に期待するのも一つの手法かもしれない。ダイヤモンドの原石を磨くためにも、指導者もダイヤモンドになるように努力を怠らないようにしたいものだ。