2013年9月号(第59巻9号)

教育の精度管理(?)

東京医科歯科大学臨床検査医学 教授
医歯学教育システム研究センター長
奈良 信雄

検査の世界では精度管理は重要かつ不可欠な事項である。データが全く不明な検体に対して検査を実施する場合、得られる結果は正確かつ精密でなければならない。さもなくば、検査の信頼性はまるで保証されない。当然のこととして、検査の精度管理は必須なのだ。
今、教育の質が問われている。大学を卒業したのにろくすっぽ英語を話せず、外国人と対等に議論できない。漢字も言葉遣いも怪しい。少子高齢化が進み、受験生全員が大学に入学できるようになった現在、大学生の学力低下は目を覆わんばかりだ。危機を感じた文科省は教育の質保証を重大課題として取り上げた。
さて、医療界で中心的な役割を果たす医師を育成する医学教育でも、これまで質保証は全く行われて来なかった。教育そのものは、各大学、各教員に委ねられていた。大学として自律性を重んじる立場からすれば、academic autonomyは歓迎すべきだろう。が、国民の医療を担う専門職としての医師を育てるには、自律性を尊重しつつも、医学部教育の質を保証し、有能な医師を排出しなければなるまい。折しも、アメリカのECFMGが、2023年以降は国際基準で認証評価を受けた医学部出身者にしか受験資格を与えないと通告してきた。ECFMGも世界レベルで医学教育の質保証を要求しているわけだ。
こうした事態を受け、小生が中心となって日本医学教育認証評価評議会(Japan Accreditation Councilfor Medical Education : JACME)を立ち上げ、わが国の医学教育質保証制度を確立することとなった。
信頼のおける医師が、信頼できる検査データを駆使して診療に当たる。適正な診療を行うのに、当たり前と言えば当たり前だろう。が、従来存在しなかった制度を立ち上げるのには相当な困難が立ちはだかる。ご支援、ご協力をお願いしたい。