2013年5月号(第59巻5号)

緒方医学化学研究所は幕引きです

財団法人 緒方医学化学研究所 常務理事
只野 壽太郎

財団法人 緒方医学化学研究所は今年6月で65年の歴史に幕を閉じます。
この研究所は1948年東京大学医学部血清学教室の緒方富雄教授が設立しました。緒方先生は梅毒緒方法の開発者で、研究所も臨床検査試薬・機器の開発・研究を主な業務としていましたが、先生自身は医学史に強い関心があり、曾祖父である緒方洪庵やヒポクラテスの資料集めに時間を割いていました。
ヒポクラテスに関しては生誕の地であるエーゲ海のコス島を何回も訪れ、彼が樹下で医学を教えたという巨木プラタナスの種を持ち帰り、苗木を育て全国の病院に配っていました。私も1981年に佐賀医大に赴任した時に苗木を渡され外来の前庭に植えましたが、1998年佐賀に上陸した大型台風で根元から折れ、枯れてしまいました。
緒方研のもう一つの事業に研究速報誌「医学と生物学」があります。この雑誌は緒方先生と有志が始めたもので、1942年1月5日の第1巻1号には「補體結合反応における補體の態度」緒方富雄(血清学)、「人の輸精管上皮に於ける注目すべき核像について」小川鼎三(組織学)、「ビタミンC及びPの発熱状態に及ぼす影響に関する實験的研究」田坂定考(内科学)など、ある年齢以上で医学を学んだ人なら誰でも知っている研究者が論文を書いています。
雑誌は戦時中の一時期休刊しましたが、1975年から緒方研が出版することになり、2003年から私が担当理事として編集長になりましたが、当時は月に1~2編程度の投稿しかなく廃刊も議論されていました。
そこで、看護大学をターゲットに、全国の看護学科の教授から講師まで全員にダイレクトメールを2回送りました。最初の1年は全く反響無しでしたが、2年目から投稿数が増え始め2005年からは月に10編以上になりました。今年1月緒方研解散のお知らせと共に、「医学と生物学」も6月末で終了とアナウンスしたところ、4月号に29編、5月号に36編、最終号の6月号には114編の投稿がありました。
この雑誌の存在意義はまだあると考え、廃刊ではなく一時休刊とし、1.査読制度を守る。2.原稿受付後2ヶ月以内に出版する。3.投稿料を低く抑える。の3条件を担保して頂けるなら、全ての権利をお譲りすることにしました。
興味のある方は、tadanoju@gmail.com迄ご連絡ください。
最後に長年に渡り緒方研にお力をお貸しくださった皆様にモダンメディアの紙面を借りてお礼申し上げます。有難うございました。