2013年1月号(第59巻1号)

グローバル化時代と日本人のルーツ

東海大学医学部 基盤診療学系臨床検査学 教授
宮地 勇人

先日、清々しい国際カップルの結婚式に臨席した。新郎は小生が研究指導するモンゴル人医師で、日本国政府の奨学金にて大学院博士課程に在学中である。新婦は日本語教師として国内外で活動する大和撫子である。二人に共通して、日本の若者が失いがちな素晴らしい点がある。それは、グローバルなチャレンジ精神とボランティア精神である。新郎は心優しい好青年で、東日本大震災では、救急医療の経験や外国語を生かしてボランティア支援したいと申し出てくれた。新婦は、外国の子供達に日本語を教えたいと、インターネットで日本語学校を探し、見知らぬモンゴルの地に渡った。元来、日本人のイメージは温厚な農耕民族、モンゴル人は勇猛果敢な騎馬民族または遊牧民族であるが、二人の性格は逆なのが微笑ましい。
日本人のルーツの一説として、同じモンゴロイドに属するモンゴル人(の祖先)がある。確かに、バイカル湖畔に住むモンゴル人のブリアート族は日本人と顔つきがそっくりである。ある特殊な血液型で見ると、共通したタイプの割合が多い。ヒトDNA配列にも共通点が多いことが判明してきた。地域の遺跡には縄文時代と共通する石器文化が見られる。縄文時代には、国籍や国境の無いグローバルな世界があった。その時代に、モンゴルから日本列島に辿り着いた人々がおり、縄文人として、日本人の起源となったとされる。
現在、大相撲でモンゴル人力士の活躍は目覚ましい。白鵬、日馬富士などモンゴルからの若者が日本古来の伝統的な大相撲を支えている。古き良き時代の日本人のようなモンゴルの好青年を見ると、共通の祖先をもつことが不思議でない。今回、モンゴル人の好青年と活動的な大和撫子が結ばれたことは、新たなグローバル化のうねりの象徴でもある。明日の日本を背負って立つ若者がチャレンジ精神をもって海外で見聞を広め、国際感覚を身につけることは、グローバル化時代の日本の活力に欠かせない。しかしながら、海外留学者数の減少に反映されるように、最近の若者は内向き傾向と言われる。二人の結婚に際して、日本人のルーツに関する縄文ロマンに思いを馳せるとともに、これからの時代を担う日本の若者が見習うべき点が多いと感服している。