2009年6月号(第55巻6号)

ヤマビルにご用心

社団法人 日本べんとう振興協会 顧問 遠藤 明彦

山登りは楽しい。しかし、心がけなければいけないことがある。その一つがヤマビルによる吸血だ。生息する山域に入る時には、登山靴やズボンに塩水を含ませる、虫除けスプレーをするとか、衣類の隙間を作らないなど侵入防止が必要だ。それでもいつのまにか靴の中などに入り込み、血だらけとなることもある。無理に取ると、傷口が大きくなって血が滴り止まらなくなる。止血には絆創膏を張る。ヒルが吸血するときに出すヒルジンなどの体液を絞り出して、抗ヒスタミン剤を塗るなどの手当をする。
ヤマビルの生息域は全国に散在している。しかし、近年、山奥から里山へと拡大し、吸血被害が増大しているとの情報を聞く。野生動物、とくに鹿やイノシシの蹄に食い付き運搬され拡散しているのだ。ヒトによる拡散は少ない。ヒルは吸血すると産卵し増加するので、吸血したヒルは必ず殺す必要がある。しかし、ゴムのように丈夫なので、潰して殺すことができにくい。塩を振りかけるとか、ライターで焼くなどが必要となる。
ヤマビルを駆除するには、鹿は柵を張り適正に駆除し頭数を減らす、また薬剤散布などがある。さらに、神奈川県や「ヤマビル研究会」で紹介しているもう一つの方法もある。ヒルは寒さに強いが、暑さに弱いことを確かめて、荒れた森林や里山の保全を図ることが必要としている。里山では林業が不振となり過疎化も進み、森林が荒廃しているのだ。森林の枝打、間伐、下草刈りなどを行うと、明るくきれいな里山となる。落葉は集め堆肥に利用する。そうすると、冬期に地表の温度が高くなり乾燥する。越冬できなくなり、ヤマビルの生息数を1/5以下に低下させることができたという。ヤマビルの生息域が狭まることを期待したい。