2009年4月号(第55巻4号)

第48回インターサイエンスに参加して思うこと

東邦大学医学部 微生物・感染症学講座 准教授 舘田 一博

2008年10月にワシントンDCで開催された第48回インターサイエンス(48th ICAAC)に参加した。今回は米国感染症学会(IDSA)との合同会議として開催され、世界各国から15,000-17,000名を超える研究者が参加したと報じられている。耐性菌の問題、ガイドライン、抗菌薬の適正使用、新型インフルエンザの脅威など、感染症に関する問題は山積みとなっている状況の中で、感染症領域のオピニオン・リーダーが一堂に集結し、世界的な視点から感染症・化学療法学の将来を議論する場となっていることを改めて実感した。
ここ十数年、ICAACには毎年出席しているが、特に今回は特別な思いで参加させてもらった。この会への参加を誰よりも楽しみにされていた桑原章吾先生がいらっしゃらなかったのである。先生は、昭和44年の第9回から40年近くにわたってICAACに参加されていたそうである。国産初のセフェム剤として開発されたセファゾリンを世界の舞台でアピールしたいという想いから、1ドル360円の時代に本剤の基礎データを持って米国に乗り込んでいったのが最初だそうだ。偶然にも、第9回大会もワシントンで開催されていたと聞く。2007年のシカゴ大会にご一緒させていただいた時には、86歳というご高齢にもかかわらず広い会場をゆっくりと歩きまわられながら、熱心に資料を集めておられた姿が印象的であった。教室員との食事の席で、昭和40年代の数々のエピソードを楽しそうにお話されていた桑原先生のお顔が思い出される。
次会のICAACは米国サンフランシスコで9月12-15日に開催される。抗菌薬開発における新展開、感染症領域におけるブレイクスルー・・・・どのような“変化”が待ち受けているのか大変楽しみである。ICAACで世界に誇れる仕事を紹介できるように、先達に少しでも近づけるように、気持ちを引き締めて精進していかなければならないと考える日々である。