2008年10月号(第54巻10号)

休肝日

JA愛知厚生連 安城更生病院 診療共同部長 犬塚 和久

「痛い、いたたた・・・・・・・・た。う、」一時間後何とか直ったが、飲みすぎで胃も疲れたかな。その痛みを忘れた翌日の夜8時、「痛い、いたたた・・・・・・・・た」2時間過ぎても「痛い、痛い、」「とっても痛い!」・・・・・「痛い・・何とかしてくれ!痛い」30分後、休日夜間救急で一番嫌われる迷惑患者の一人となった。「寒い、ブルブル、ガタガタ、いててて、痛いよう」10年前の親父の症状とまったく一緒。自己診断では、胆道結石、敗血症。「ご家族様ですか?」、「この痛みは動脈乖離か、結石だと思います。CT検査、緊急検査の結果をみて対応します」。検査の結果、胆管結石、急性膵炎、敗血症で初めて入院患者になりました。先生の質問「どうしますか?」即、言葉として出た「血液培養とスルペラ。」翌朝昼前に、微生物検査室からの中間報告で、血液培養も陽性、“グラム陰性桿菌、腸内細菌だと考えられます”と報告されていた。2セット4本のうち、1本からエンテロバクターとクレブシエラ二つの菌種が悪さをしていた。
急性膵炎のため「絶食、大量輸液療法で治療いたします。」何度もチャレンジして失敗を繰り返していたダイエットに成功。しかし、詰まった石は詰まりっぱなし、ひどい黄疸、胆道鏡で摘出。翌月に大事に溜め込んだ胆嚢のダム湖に溜まった浚渫工事のための手術。おなかの痛さに眠れない夜を過ごしながらふと、頭をよぎった・・・
お酒は百薬の長?万病のもと?適量ならば「百薬の長」、適量を越えると「万病のもと」。では、適量とはどのくらいなのか?超えて飲み続けるとどんな「万病」を招くのか?
今日は芋にしようか、麦にしようか、たまには冷酒に、帰りの車の中で頭に浮かべながらいそいで家に向かい、帰宅と同時にまずは一杯。食事をしながらもう一杯、風呂から出てきてもう一杯。いわば、毎日の生活スタイル。休みの野良仕事の後はやはり、のどに潤いをなんて考えながらビールをグイッと一杯。
「お父さん、休肝日のない人は休肝日のある人に比べ、死亡率が2倍高くなるんだって、長生きしたいなら、“liverholiday”忙しい肝臓に休暇を与えてあげたら?」この言葉は、私にとって毎日の生活スタイルを「全否定」しなければならないようなものです。 一応「反省」し、「改善」しようと考えるのですが、残念ながら「三日坊主」に終わっていました。
職場では送別会、歓迎会、勉強会、講演会、仲間とあえばいつものごとく一杯、今週もよく飲んだな。5月5日は親戚の節句の祝い、5月7日は勉強会の後の懇親、9日は新人歓迎会、肝臓君に休みはなかった。
四川大地震と同日に起こった、わが体の崩落事故の経験。震災予防と、生活習慣病予防の重要性は経験してからわかる。おろかさを肝に銘じた経験と、患者の立場に立って我が施設の状況も冷静に見ることができた初めての体験でした。我が休肝日・・・今のところ続いています。