2008年10月号(第54巻10号)

色紙に描く季節の草花

木ささげ

多摩川が流れている。その向こうに多摩丘陵が続いている。京王線の鉄橋を渡ると聖蹟桜ケ丘駅があり、ここに京王電鉄の本社ができ、デパートもでき、活気が出てきた。近くの丘陵が開発されて、立派な高級住宅地となった。その丘陵を越えて向こうは、以前はバスが通るくらいで交通の極めて不便な地域であったが、京王線橋本行の路線ができ、稲城、永山、多摩センターなど東京の新都市計画にしたがって新しい団地群ができ、別天地のようになった。

多摩センター駅で降りて南に一直線になだらかな登り坂があり、その終点に文化センターの建物とそれをとり囲むように緑の公園がある。散歩にはもってこいの憩いの広場である。子供連れの親子が遊んでいる。園芸センターができ、それに接して日本各地の木が植え込んである。園芸センターにはよく行ったが、ひと通り草花になじみができてしまい、日本各地の木に興味が出てきた。

秋のある日、見上げると面白い実がなっているのが目に付いた。木ささげと標識が出ている。初めて見た。これは面白いと感じ絵に描いた。

家に帰って調べてみると、中国原産、のうぜんかつら科の落葉高木、夏に白色で暗紫色の斑点のある花が多数咲くとある。もっと枯れて冬になると、曲がりくねった枝に長いまっすぐな実が数個集まって付き、とても風情のある茶花になる。写真で見本を見ると、なるほどいいなと思う。

絵とエッセイ 藤本 吉秀

大正15年(昭和元年)生まれ。昭和の年号がそのまま年齢になった。

<職歴:内分泌外科医>
もと東京女子医大内分泌外科教授。1987~1989の2年間国際内分泌外科学会会長を務めた。
今は癌研有明病院、日本赤十字社医療センター、調布東山病院で甲状腺診療をしている。

<絵の略歴>
昭和59年、八丈島から贈られた黄色のシンピジウムがとても美しいので色紙に描いてから、季節の草花を色紙に描くのが趣味となった。平成10年、柏市で甲状腺外科検討会がひらかれた時、会場の近くの画廊で色紙の個展をした。
その後、松下黄沙(Group 82)について墨絵三昧。
2人展(平成14年)、12人展(平成16年)をはじめ、春、初夏、秋にそれぞれ各種グループ展に出展。

<運動>
ずっと以前のことになるが、学生時代、一高、東大を通してボートを漕ぎ、昭和24、25年8人で漕ぐエイトで連続全日本選手権制覇。

はじめの1年間は、「色紙に季節の草花を描く」をテーマにして出します。
次の1年間は、「墨画にのめりこんで」として、風景、植物、仏像など何でも取り上げて描きます。