2008年6月号(第54巻6号)

笑いは活力・おかしかったら大いに笑って

大東文化大学スポーツ・健康科学部 学部長 健康科学科 教授 伊藤 機一

某月土曜日午前、臨床検査専門医試験対策用の「寄生虫学」の講義を東海大学で行った。受講生は30名弱の現役医師で、双方とも緊張気味、こんな時は笑い話を挟むのが良しとする長年の経験則に従い次のジョーク(駄洒落?)から始めることにした。
「寄生虫・微生物と人間とは“Parasite(寄生体)vs.Host(宿主)”の関係にある。この場合、宿主が女性であってもHostessとは言わない…」という語り継がれたジョークに大きな笑いをもらい、おかげで後の講義は順調に進められた。その日の午後は気持ち良く大阪に移動、府臨技北支部自由集会で「尿検査の過去・現在・未来」と題する講義を行った。司会役の今井宣子嬢、大阪大学招聘教授就任のお披露目ムードもあって会場はほぼ満席、まずは上記「ホステス」話をしたのだが全く受けなかった(吉本興業風の味付けがないと受けないのかとやや反省)。
次に自己紹介を兼ね、小生の名前・機一(きいち)にまつわるジョークを語った。この名は当時英雄、後にA級戦犯となった東条英機と母方祖父の左一に由来するのだが、心機一転、危機一髪なる四字熟語に潜むなどで気に入っている。そこで20年ほど前のジョークを一席。某医学系出版社の編集者N嬢が電話で原稿の執筆依頼をしてきた。「お名前の“きいち”は漢字でどう表すのですか?」との問いに「機械(機会)の“機”に数字の“一”です」と答えたのだが、送られてきた速達便には“奇一様”とあり思わず絶句、N嬢はおそらく機械(機会)を奇怪と錯覚したのだろう。このことを技師会集会で話したところ大受けであった。
錯覚ついでにもう一つ、10数年前の専門医試験での体験はむしろ感動的ですらあった。私の担当はスライド投映により尿沈渣成分の名称を問うもので、問xは「腎糸球体病変で出現する…」のヒントのもと“変形赤血球”が正解である。還暦間際の某教授は“子宮体病変による変形赤血球”と真剣に解答。後にその受験生が婦人科病理の大家であることが判明して大納得、もちろん総合高得点で無事合格されている。この話も大阪で大受けだった。
ところで我が大学の講義中に眠気覚ましとしてジョークを挟むのだが、最近笑う学生は少ない。なぜ笑わないのかゼミの学生に尋ねたところ、「周りの学生の様子を見て、それに合わせて笑うのがイマドキ」といささか衝撃的な返事が返ってきた。笑いは活力の素、NK細胞の活性化で免疫能が高まるなど身体にも良い。面白い話には素直に笑って欲しいと思う。