2007年9月号(第53巻9号)

臨床検査と査定

北里大学医学部臨床検査診断学 大谷 慎一

皆さんはレセプトをご存じだろうか?いや失礼、医療関係者であれば当然知っているはずである。医療機関にとってはこれが大事な債券のようなものである。実施した医療行為が点数として反映され、最終的に一個人ずつ1 枚の紙として出来上がる。この紙を支払基金もしくは国民健康保険団体連合会に提出して審査を受け、後日医療機関に診療報酬として振り込まれる。当然請求金額がそのまま100%認められれば丸々収入となるが、査定を受ければ減収となってしまう。この減収となる査定原因の一つに臨床検査がある。査定事由には、病名漏れ(A)、過剰(B)、重複(C)、規則違反(D)の4つがあり病名漏れは医療機関にとって致命的である。せっかく適正に行っている臨床検査であっても何の疾患の為に行ったのかが、レセプト上で見えなければ査定対象になってしまうのである。最近特に、臨床検査は査定の格好の的となっていると感じている。医師は臨床検査が査定されても投薬や注射とは違い、一大事とは考えていないからである。また、保険診療上は順を追って診療をするように促しているが、大病院になるほど1回の診療で多くの臨床検査、画像検査などを一気に行う傾向が伺われる(やむをえないかもしれないが)。今後は医療のIT化を集中的に推進していく観点から、レセプト電算化システムの導入ならびにオンラインシステムを活用したレセプトのオンライン請求が全面的に導入されることになる。そうなると臨床検査と病名のマッチングや投薬、注射、画像、処置、手術といった諸々の医療行為が簡単に抽出出来てしまい、適正な病名の有無や禁忌とのマッチングが格段に容易(今までは手作業)となる。各医療機関での対応は急務を要するであろう。我々の病院でも長年の懸案であったオーダ時の臨床検査と病名の対応システムがいよいよ導入されることとなった。多少、力技の感はあったが、実務者としては押し込めることが出来たので満足している。このシステムは未来永劫、継承されるであろう。