2007年8月号(第53巻8号)

ISO15189

大阪医科大学 総合診断・治療学講座 臨床検査医学 田窪 孝行

臨床検査は疾患の診断、治療方針の決定、治療効果の判定などに不可欠である。さらに予防医学的には、 潜在疾患の早期発見や健診などにも広く利用されている。検査の信頼性は技術の進歩と精度管理に対する取り組みにより著しく向上している。しかしながら検査の標準化が進んでいないのが現状である。近年、人の国際交流が盛んとなり患者がどの医療施設でいつ検査を受けても正しい検査結果が得られることへの要望が高まり、臨床検査の分野でも国際標準化の波が押し寄せている。

1947年に設立された国際標準化機構(International Organization for Standardization, ISO)は、国際規格ISO9001やISO14001を発行し、日本でも多くの企業が取得している。医療に関する専門委員会(ISO/Technical Committee, TC)が1995年に発足したISO/TC212委員会で、臨床検査に関する国際規格ISO15189[臨床検査室-質と適合能力に対する特定要求事項-]を2003年2月15日に発行し、認定規格として制定した。欧州試験所認定協力機構では、いち早く臨床検査室の認定にISO15189の採用を決定し、欧州連合加盟国では認定が義務化される予定である。オーストラリア、ニュージーランドでは、臨床検査室の認定が2005年から実施され、また中国、台湾、シンガポール、インドネシア、タイなどでは、政府主導で臨床検査室の認定の動きが進んでいる。米国では1961年設立のCAPが公認を受けて、検査施設を認定している。現在、日本の医療機関では、ISO15189認定が義務化されていない。

国際整合化が進むにつれて、臨床検査の質の保証や国際標準化には、国際規格ISO15189が最も適していると思われる。将来、ISO15189の認定が国際的な臨床治験の参加条件になるかも知れない。2003年12月から日本臨床検査標準協議会(JCCLS)と(財)日本適合性認定協会(JAB)が協同で取り組み、ISO15189に基づくJCCLS/JAB臨床検査室認定プログラムを開発した。JABが2004年からパイロット審査と2005年8月から認定事業を正式に開始した。2007年4月10日現在、北海道大学、九州大学、熊本大学、東京大学をはじめ23の医療機関が認定されている。2005年、臨床検査専門医や臨床検査技師が中心に、検査機器・試薬メーカーの賛助により「大阪臨床検査ISO15189研究会」を設立した(http://www3.famille.ne.jp/~kenmie/iso.html)。設立後4回の研究会を開催しているが、2007年3月末に近畿地区で2つの医療機関がISO15189の認定を取得した。本学もISO15189の認定に向けて準備を開始したところである。