2006年12月号(第52巻12号)

広島市バスの停留所番号「九」

新潟県立がんセンター新潟病院 臨床検査部長 佐藤 豊二

2003(平成15)年10月29~31日、広島国際会議場で第50回日本臨床検査医学会総会があった。新大阪から新幹線に乗った。上越新幹線よりはるかに速いのに驚いた。広島駅に下車。時間もあったので会場には、バスで行くことにした。バスに乗り座席に着いて驚いた。運転手の左側のプレートに停留所の番号がアラビア数字と漢数字で書いてある。9に相当する番号だけが「九」である。気になって、前の座席に居る女子大生風の女性に、「九だけがどうして漢字なんでしょうかね」と言うと、「あ、そうですね。気がつきませんでした」と、笑う。そういう事情だから、19番に相当する番号は「1九」である。

総会がはじまり、いろいろ報告されたが、例のことが気になって、集中していなかったようだ。総会の後、渡辺伸一郎先生(東京女子大)が、「良いところがある」という。還暦近い私達に、「良いところ」と言えば、食べて美味しく、飲んでうまい、ところ。そこは「ひろしま 八雲」であった。菰田二一先生(埼玉医大)、三浦雅一先生(三菱化学)も合流して痛飲した。酔いがまわったころ、バス停留所の番号の話をしたが、彼らはタクシーで会場に行き、バスの件は知らなかった。いくつか迷回答がでたが、どうも…。料理を運んで来てくれた女性にも話したら、しばらくして、「女将さん」が来て、バス会社に電話できいたら、たしかに、九は漢字であると、会社の方も知っていました。数字の使い分けは「解り易さ」のためという。サービス精神に満ちたお店の人々である。

この学会総会では、「蛋白の質量分析」が臨床検査の分野でもさらに重要であると感じられた。数日後伊丹空港から新潟行きの飛行機に乗った。白い雲がいやに快活に流れている。「九」の件、はじめ直感的には、被爆と関係があるのかと思ったが、「六」も使っていないのだから、もしかすると、バス停の番号「九」の裏には、私などには想像も出来ないことがあるのかも知れない。