2006年12月号(第52巻12号)

心に残る、山と花

雲の平夕景

天上の楽園とまで言われる雲ノ平(平均2,500m)には時間を節約して東京から夜行バスを利用し、有峰を経由して折立で降り、ベンチで一休みして出発。愛知大学の遭難供養の塔を左手に見て太郎坂を登っていきます。1870.6mの三角点まででると視界がひらけ、薬師岳と立山方面を望むことができます。ここから少し登ると明るくひらけた草原の中の登りとなります。やはり夜行バスでは疲れているせいか足が重く、なかなか進まないのですが、何とか6時間で第1日目の宿泊地、太郎平小屋に着きました。

翌日はどしゃぶりの雨、出かけようか迷っていたら、小屋のスタッフの方が薬師沢の水が増水して渡渉が出来ないことを教えてくれ、やむなく1日停滞としました。山を数日間縦走していると、このように時々停滞せざるをえなくなることもあります。予備日を1日とってあるので、帰りが遅いとのことで心配かけることもありません。

翌朝は何とか雨もおさまり、スタッフの方からも気をつけて行くように言われて出発。心配した沢の渡渉はクリアできたものの、薬師沢から雲ノ平への極端な急登と大きな石が次々と現れ、足場は悪く、休憩する様な場所もなく、展望もなく、ただひたすら歩を進めるだけで快適な登山とはいえませんでした。薬師沢から約3時間、展望が開け雲ノ平の一端アラスカ庭園に出ました。

雲ノ平は北アルプスの秘境といわれ、黒部川の源流に四方を囲まれ、日本庭園、ギリシャ庭園、スイス庭園、祖父庭園等数々の庭園があり、豊富な高山植物の中に池塘が点在しています。また、薬師岳、黒部五郎岳、三俣蓮華岳、水晶岳等雄大な山脈の眺望が素晴らしいです。日数に余裕があれば、雲ノ平の中心にある山荘に連泊して、ゆっくりと散策したいところです。山荘に着いて、くつろいで間もなく、外が賑やかなので出てみると、空が赤くなり始めていました。急いでカメラを持ってきて、赤く焼ける雲ノ平をカメラに収めました。

写真とエッセイ 後藤 はるみ

1938年 東京に生まれる
1963年 東京理科大学理学部卒業後、代々木病院検査室勤務を経て東京保健会・病体生理研究所、研究開発室勤務
1978年 東京四谷の現代写真研究所に第3期生として、基礎科、本科1、本科2、専攻科、研究科で7年間写真を学ぶ。
1984年 写真家・竹内敏信氏に師事、現在に至る
1999年 病体生理研究所定年退職

・日本山岳会所属 ・エーデルワイスクラブ会員
・全日本山岳写真協会 会員
・写真展「視点」に3回入選
・全日本山岳写真協会主催の写真展に毎年出品
・その他、ドイフォトプラザ等でグループ展多数