2005年10月号(第51巻10号)

研修医の臨床能力開発と医療安全

東葛病院 臨床病理科・検査科 下 正宗

医師の卒後臨床研修の必修化がはじまった。当院では、10年以上前から研修医をベッドサイドで育ててきた。指導医というより患者さんやスタッフから育ててもら っているというのが実感であった。重要なことではあるが、最近は医療情勢の変化から、医療安全の視点が強調されてきた。研修に伴う安全確保のための基準も マニュアル化されつつある。当院でも暗黙の了解であった事項を明文化する作業にはいっている。教育の場面で強調されるのは、「see one, do one, teach one」で、teach oneになれば身に付いたといえるのであるが、マニュアルを作る際に、do one の判断をどうするかということである。手技に関してはさまざまなシミュレーターを用意して何回も練習をして実際に患者さんに対して実施させていただくことになるが、だれでもはじめてがある。このはじめてを誰がいつ許可するか。また、実際現場で「失敗」を繰り返す中でさまざまなバリエーションに対応できる能力を身につけるのも事実である。だれの利益を最優先にするかといえば患者さんであることは誰も否定はできないが、研修医の能力開発はどのように行うか。これまで当院では、内科系病棟に研修のベースをおきながら、外科、小児科など、当院での医療活動に「参加」する上で必要な能力開発を行ってきた。新制度においては種々の制約から研修のベースキャンプの移動が余儀なくされ、トータルに研修医の成長に応じた研修フィールドを提供するのが困難になっている。さまざまな工夫でカリキュラム上の特徴を出そうと試みているが、見直しの時期にはさらに各施設の強みを生かせる制度に変えていってもらいたいものである。