2004年6月号(第50巻6号)

キャンパスで

北里大学医療衛生学部 臨床検査学専攻
阿部 美知子

8年前に、病院検査部から大学医療衛生学部に移籍となった。

本学は、バス通りに面して病院があり、その奥に併設された医学部、次いで看護学部、医療衛生学部および理学部が配置されている。 病院職員の時代は、せいぜい医学部どまりで、同じキャンパス内でありながらその奥に配置されている建物内はもとより、その周辺さえ足を踏み入れることはなかったが、医療衛生学部に移籍して日々目のあたりにするにつけ、この未知だった領域が病院とは全く別の世界である事に驚嘆した。学生はサバンナのキリンの如く悠々と歩き、エレベーターは、同乗者が居ようともおかまいなく、遅れてくる友人のために「開」ボタンを何時までも押し続けられ、当の友人はとみると急ぐ気配もなく、悠然と現れては礼の一言もなく乗り込む。この時の流れの悠然さは教職員も同じと思っているらしく、当方の都合には何等お構いなく突然現れ、我々を拘束する。

一学年に100人もいると学生の質もピンからキリまで幅広く、接触が多くなるのはキリのグループである。実験中に同じ失敗を繰り返す者、整理整頓出来ない者、全ての動きが緩慢な者、等々に、同じような注意を繰り返すのはストレスとなる。

以前、医学部に在籍しておられた某教授は社会道徳の欠如した学生を見かけると激怒する事で有名であったが、案の定、学生間の評判は良くなかった。私もその年齢に達したためか、某教授のお気持ちを理解出来るが、見知らぬ学生にまで注意する勇気は無い。せめて自分の周りにいる学生だけでも、最低のルールは教えたいと思っているが、当の本人はどこ吹く風である。今春のサラリーマン川柳にあった「へぇーじゃない、お前の事だ、ちゃんと聞け」。全く同感である。

臨床検査技師国家試験の合格発表も終わり、卒業生がそれぞれの就職先で動き出すこの時期、毎度の事ながら、「大丈夫かな」と数人の顔が脳裏をよぎる今日この頃である。