2004年6月号(第50巻6号)

山のスケッチ

蔵王御釜

ペン+水彩(22.3 × 15.8cm)

蔵王連峰の最高峰の熊野岳に
陸奥をふたわけざまに聳えたまふ
蔵王の山の雲の中に立つ
という斎藤茂吉の歌碑が立っている。そこから南に伸びる広い稜線は宮城と山形の県界で,これをたどると「ふたわけざまに」といういかにも茂吉らしい用語が実感として受けとれる。この尾根を刈田岳の方へ向うと,左手に御釜が見えてくる。水蒸気爆発によってその火口が開いたのが,約1000年前で,現在の形になったのは170年くらい前というから,御釜の生成は比較的新しい話である。日本には火山が多いので美しい火口湖がいくつもあるが,それぞれ微妙に色がちがう。含まれている金属イオンの差によるのだろうが,エメラルドグリーンの御釜はまわりの赤茶けた岩肌との対比が美しい。

ここは観光バスが入るので,沢山の人がカメラを向けている。小さなスケッチを一枚描いて早々に引きあげた。

スケッチとエッセイ 武田 幹男

昭和7年生まれ
薬学博士元・田辺製薬株式会社 有機化学研究所長 常務取締役
※絵の略歴 定年退職後、 水彩スケッチを始める
山と渓谷社「山のスケッチコンテスト」準特選入賞
2002年、個展を開催 楽風会 所属
※山の略歴 元・関西山岳会会員
現在はネパール・ヒマラヤのトレッキングなどを楽しむ