2004年2月号(第50巻2号)

飛行機誕生百年雑感

豊寿園温泉医院院長・元東海大学教授 向島 達

飛行機の誕生には諸説があるようだが、その問題はさておき、昨年、12月にライト兄弟の飛行機誕生百年記念式典が米国で開催された。そこで歴史を刻んだライト兄弟の飛行機を再度飛ばそうと試みたが、飛べなかったとの余話を残した。

新春から、米国の無人探査機が火星着陸の話と鮮明な画像が新聞紙上を飾った。人類の宇宙にかける夢がまた一つ実を結んだと感じた。百年前、ライト兄弟に宇宙までの夢があったかは判らないが、空を飛びたいとの夢にかける情熱と当日の飛行条件などに恵まれ、百メートル足らず、12秒の飛行に成功した。それから百年が経たないうちに、多くの人の英知を集めて発展し、飛行物体は大陸間を行き来し、宇宙空間に行き、地球の衛星である月に人類を往復させ、太陽系の木星への無人探査機、そして今回の火星無人探査機の着陸など目まぐるしい発展を遂げた。私達、練習機の複葉飛行機、プロペラ機を見て育った年代にとっては、この目覚ましい発展は、戦争と云う悲劇的側面も、これら技術とオーバーラップするものの素晴らしいものと感ずる。

これら一連の宇宙技術を可能にしたのは、飛行機、ロケットなどの技術に加えて高度に発展したコンピュータ技術の制御によってなされている事は皆の知る所である。飛行機からの技術は、より早く、遠く、安全にと云う目的(Need)が、夫々の時代の技術(Seed)を基に発展を遂げ、機器として、最高峰に達した。一方、1930年後半から生まれた電子計算機は、演算、論理、記憶などの基本構造を持ち、その演算の正確さ、早さに加えて、判断まで可能な機器へと発展した。両者の技術が相まって、宇宙と言う目的に集約され一連の成功に至ったと思われる。今後、高度に発展したコンピュータ技術は、色々な生活面での目的を生み、更に多くの技術を基に、我々の生活や制度に革命的な変化をもたらして行くだろう。