2026年7月号(第72巻7号)

加齢と眼病リスク

新渡戸文化短期大学 学長
宮地 勇人

 近所にある新井薬師梅照院(東京都中野区)は、眼病平癒の御利益で知られている。その由来は、江戸幕府二代将軍・徳川秀忠の五女で、後水尾天皇の中宮・和子(東福門院)が眼病を患った際、本尊の薬師如来に祈願したところ、たちまち回復した逸話にある。白内障や老眼など眼病リスクは加齢に伴い高まる。中高年から街歩きを楽しんでいる高校時代の同級生にも、最近眼病が急に増えた。そこで、街歩きを兼ねて、新井薬師梅照院を参拝することになった。眼病の発症経緯を個別に聞いてみると、それぞれに長年の背景リスクがある。一人目は、目の充血と強い眼痛で発症し、眼科受診の結果、ドライアイによる結膜炎と診断された。両眼に翼状片があり、それが悪化要因という。翼状片があると角結膜表面が不整となり、涙が均一に広がらなくなる。その結果、涙が蒸発し、ドライアイ症状が出やすくなる。加齢による涙腺機能低下も、涙液分泌の減少を来たし症状を助長する。本人は、長年のパソコンやスマートフォンの使用が原因と考えていたが、同じ環境にある他の仲間は発症していない点から、説明しにくい。そこで翼状片が両側である点に着目し、趣味である登山との関係を調べてみた。登山愛好家には両側の翼状片が多い。山では紫外線が強く、岩や山肌からの照り返しも加わるため、結膜上皮細胞が刺激を受けて翼状片が生じやすい。対策としてUVカットサングラスの使用が推奨されるが、本人は景色を楽しむため着用していなかった。二人目は、生来の遠視で目の不自由はなかった。突然の激しい頭痛と眼痛、視力低下に襲われた。眼科を救急受診した結果、急性緑内障発作(急性閉塞隅角症)と診断された。放置すれば失明の危険がある。緊急に眼圧を下げる薬物治療を行い、症状安定した後に虹彩切開手術を受けた。長年の遠視では、虹彩と水晶体の間にある隅角が狭くなり、眼圧上昇と急性緑内障発作のリスクが高まることを改めて認識した。眼に限らず、体調が良好でも加齢とともに全身の臓器において長年の負担が蓄積し病気を発症する。日頃から健康管理と予防対策を行う重要性は、年齢とともに高まる。眼病平癒の祈願をきっかけに、自身のリスクを把握したうえで、普段の健康管理を改めて心がけたい。