2026年7月号(第72巻7号)

鳥棲む空にて

ケイマフリ

撮影地:天売島(北海道)

 ケイマフリという名は、アイヌ語のケマフレ(「足が赤い」の意)に由来するといわれ、環境省のレッドリストでは、近い将来に野生で絶滅するおそれが高い段階である、絶滅危惧IB 類(EN)に分類されています。
 撮影地の天売島は、北海道北西部の日本海に浮かぶ離島です。道北の海を象徴する鳥、オロロン鳥の繁殖地として知られており、今回の旅の目的も、オロロン鳥の撮影と、ウトウという海鳥の帰巣を観察することにありました。
 島までは、新千歳空港からJR で札幌駅まで約40 分、羽幌までバスで3 時間半、さらにバスとフェリーを乗り継いでようやく辿り着きます。「地味な海鳥」を見るための代償としては大きすぎるのではないかと、途中から少し気が重くなっていました。
 到着後、その足でウトウの繁殖地へ向かいました。夕陽に染まる海の彼方から、何万羽ものウトウが弾丸のように帰ってくる光景は、言葉を失うほどの迫力でした。ただ、日没後となるため、写真に収めることはできませんでした。
 翌日はガイドの案内で、小型ボートによる探鳥です。しかし、オロロン鳥の独特の姿はなかなか見つかりません。ここまで来て、空振りに終わるのではないか?そんな気配が濃くなりに、船上にはどこか重たい空気が漂っていました。
 崖下の岩場のあいだを、ゆっくりと進んでいたときのことです。目の前の岩場で、二羽のケイマフリが突然、大きな声で鳴き交わし始めました。求愛行動です。慌ててカメラを構え、夢中でシャッターを切りました。その一枚が、この写真です。
 絶滅危惧種であるケイマフリの求愛を、これほど間近で撮影できたのは、まさに僥倖でした。不思議なもので、この一瞬の出会いが、それまでの疲れや落胆をすっかり消し去ってくれました。ほんのわずか、自然が応えてくれたような気がして、深い満足感とともに、天売島をあとにしたのです。

写真とエッセイ  佐藤 秀樹

<所属>
獣医師 日本毒性病理学会認定病理学専門家
テルモ(株)R&Dテクニカルアドバイザー

<プロフィール>
テルモ湘南センター 元主席研究員
テルモバイオリサーチセンター 元センター長
人工血管、ステント、イメージングデバイスなど、種々の医療機器の研究開発に従事。

写真は20代の初めの頃、当時お世話になっていた国立衛生研究所の室長に薦められて。モチーフは主に風景と鳥。
記憶している最初のカメラは、キャノンEOSシリーズの1号機、EOS650。
現在使っているカメラはNIKONで、購入したのはつい最近のこと。
それまで使っていたカメラとレンズ資産を手放して購入し、現在は望遠レンズ購入を検討している。

撮影のモットーとしては、デジタルカメラで撮影の際は、多少ピントが甘くても、その瞬間を逃さずシャッターを切ることが大事だと思っている。