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2026年5月号(第72巻5号)
子宮頸がんワクチン事件のその後の経過であるが、深刻な副作用を受けた被害者の支援団体が、リスクの高いワクチンを製造販売・承認したとして国と製薬会社を相手取り集団訴訟に踏み切った。このHPV薬害訴訟全国弁護団代表は薬害エイズ事件の裁判で、原告側の弁護士として重要な役割を演ぜられた水口真寿美弁護士である。始まって間もないこともあり、裁判の帰趨は不明である。
筆者はこの小文をはじめ、いろいろなところで子宮頸がんワクチン問題に関するコメントを書いてきた。別のところでも書いたことであるが、実は人を介して水口弁護士から三瀬さんの意見を聞きたいといわれ会談している。会談では水口弁護士は感情を表にあらわされることもなく終始理性的で、柔和な笑みをたたえながら自己の意見を述べられた。微生物学や免疫学をはじめとする医学全般にも精通しておられる思索的な方とお見受けした。会談を通じて「副作用事例の解析が進まないと何とも言えないが、諸外国の事例などから、子宮頸がんワクチンはリスクを上回るベネフィットがあると思う」という私の主張と、「断じてそうではない」とされる水口弁護士の主張はかみ合うことはなかったが。
しかし、我が国ではワクチン行政全般に対して責任を持つ、米国のACIPのような独立した組織が存在しなかったことが、子宮頸がんワクチン事件のような不幸な事件を招来した;また日本版ACIPの早急な設立が必要である;いう点で水口弁護士と意見の一致をみた。集団訴訟後も、行政府では日本版ACIP設立の動きがあるようにも思えない。日本版ACIP の設立を強く訴えられてきた大谷明先生(元感染研所長)が亡くなられて10年近くが経過している中で、全く残念な現状である。