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2024年8月号(第70巻8号)
世界には当時の権力者を祭る巨大な墓または建造物がある。エジプトのルクソールは古代エジプトの遺跡が並ぶ。ツタンカーメン王の墓をはじめ歴代の王様の墓としてのピラミッド群は「王家の谷」と呼ばれる。観光気球で巨大な遺跡を空から眺める景色は世界で最も美しい眺めとされ、世界中からの観光客に人気である。その気球が墜落して日本人観光客が犠牲となった。日本にもピラミッドに匹敵する巨大な古代遺跡がある。最大のピラミッドである「クフ王のピラミッド」は、底辺の長さが230mの正方形である。これに対し、最大の古墳である大仙古墳(伝・仁徳天皇陵)は、長さ486m、幅300m。平面的な広さは、日本の古墳の方がピラミッドより遥かに大きい。
関東には、鎌倉幕府が置かれていた時代より、数千年以上の古い歴史がある。生活している地域(神奈川県)の古墳・遺跡を探索すると、身近なところで、誇るべき貴重な史跡が残されていることが判る。近畿地方と比較して、華やかさはないものの、古墳・遺跡の種類や数は豊富で、神社仏閣など史跡も多い。近くの大山の麓は、古墳が多い地域として知られている。自宅の最寄りの駅近くには、長さ50-80メートルと比較的大型の古墳が点在している。築造は4世紀とされ、歴代首長の墓の一部を構成していると考えられている。特に、地頭山古墳と小金塚古墳は、小田急小田原線のごく近くに存在し、車窓から壮大な姿を望める。何気なく眺めている車窓からの景色の中に、実は古墳を望めるのである。地域の日本人の祖先が築いた遺跡は、ピラミッドに優るとも劣らないほど壮大で厳かである。費用と時間をかけず、日本でも古代人の叡知とエネルギーの集大成を身近に味わい、古代ロマンに思いを馳せることができる。海外旅行での古代遺跡めぐりも良いが、生活圏の探索は何よりも安価で安全である。身近に古代のロマンと趣きを感じることができる地域の遺跡の探索を是非お勧めしたい。