2024年1月号(第70巻1号)

鍵は傾向分析と実践

新渡戸文化短期大学 学長
宮地 勇人

 小生の名前は、父親が尊敬する同郷の総理大臣の池田勇人に肖って、勇人(はやと)と付けられた。しかしながら、期待に反して小学校6 年間、成績はきわめて不良であった。祖母の教育方針が大きく影響した。「早くから書字を覚えると、早々に馬鹿になり、大成しない」。この教えに従った放任主義の母親の元で、のびのび育てられた。このため、字が書けない状態で小学校に入学した。その結果、授業についていけず、テスト成績は0~20 点と散々であった。誕生日が終戦記念日8 月15 日であることを重ね合わせ、当時の人気漫画「0(ゼロ)戦はやと」(辻なおき作)を文字って、自虐的に「0(ゼロ)点はやと」と称した。転機は、中学生時代に訪れた。一緒に通学していた友人2人が優秀で、通学中の会話に感化された。2年生時、高校受験の準備に着手した。過去の入試問題を解き、出題傾向を分析した。その結果、中学校の教育や教科書だけでは対応できないと悟った。全国で用いる中学校の教科書は大きく3種類あり、共通する英単語は限られていた。そこで、3つの教科書に出てくる英単語それぞれ1,500 単語を調べて網羅した。それを踏まえて、5,000語掲載された英単語熟語集に取り組んだ。近くの都立高校に進む予定であったが、親に内緒で慶應義塾高校の受験に挑戦し、合格した。「0 点はやと」から「元祖ビリギャル」である。ビリギャルは、坪田信貴作のベストセラーで、学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應義塾大学に現役合格した話である。今思うと、ビリギャルのように塾通いや家庭教師の指導があれば受験対策の鍵について指南されたであろう。小生は放任主義の家庭でそのような機会に恵まれなかった。一方、高校受験において独力で切り開いた貴重な経験は、その後の人生において大いに役立っている。高校では傾向分析に基づく対策を実践し、医学部に進学した。半世紀を経た現在、受験準備を支援する立場となった。臨床検査技師の国家試験受験において、元国家試験委員・委員長の経験を踏まえて、「鍵は出題傾向の分析」の理論と実践を踏まえた教育システムを導入し、成果を挙げている。