2023年5月号(第69巻5号)

映画と旅行

国際医療福祉大学 教授
国際医療福祉大学熱海病院 検査部長
〆谷 直人

 2007 年のモダンメディアに掲載された『マッチポイント』は、趣味の映画鑑賞より佳作を紹介した随筆でした。映画は年間150本程度のロードショー作品を観ていますが、それ以外に旅行というもう一つの趣味があります。現在までに日本国内はすべての都道府県を、国外はおよそ100 ヵ国を訪れています。私のストレス解消は「映画と旅行」で、私にとって「映画と旅行」の関係は「鶏が先か、卵が先か」で、“映画で観たからその地を旅行する”か“旅行した場所がロケ地の映画だからその作品を観る”かです。
 学生時代は、1997 年に創刊された『地球の歩き方』の「ヨーロッパ」編と「アメリカ」編を手にして個人旅行を楽しんだバックパッカーでしたが、就職してからは旅行会社の主催旅行に参加することが多くなりました。といっても1999年から2 ~ 3年に1 回の割で私が企画するツアーを催行し、旅仲間と旅行しています。2017年の年末から2018年の年始にかけてバヌアツ共和国を訪れました(通算13回目となる企画ツアー)。
 バヌアツは日本からの観光客が年間1,000人ほどという、かなり穴場の観光スポットです。この国では大自然を体感できるので、活火山(ヤスール火山)の火口に近づいて火を噴き上げる様子を見物したり、地中から湧き出る淡水でできた幻想的な青さと透明度の池(リリブルーホール)で泳いだりしました。このバヌアツをロケ地にした日本映画が『ちょっと今から仕事やめてくる』(2017 年5 月に劇場公開)です。この作品は、ノルマが厳しい企業に勤め心身ともに疲弊した青年が、ホームで意識を失い電車にはねられそうになったところを幼なじみと名乗る男に助けられ、その男との交流を通じて生き方を模索するさまを描いています。この作品は仕事に疲れた人に観て欲しいですが、なぜロケ地がバヌアツかと思われた方は是非ご覧ください。
 現在、日本人のうつ病有病率は12%程度と推定され、全国民の約8 人に1 人はうつ病かうつ状態にあるといわれています。さらに若い人を中心に、多くは仕事がらみのストレスから発症する、従来のうつ病とは症状の異なる「新型うつ病」が増えており、薬が効きにくく、なかなか良くならないと社会問題になっています。勤労者にとっては職場のメンタルヘルス対策とストレスの解消が必要です。