2023年3月号(第69巻3号)

我々臨床検査従事者は、考える医療人でありたい!
検査業務では常に、CQ「何故」、そして病態との整合性はとれているか!?

社会医療法人社団 大久保病院
犀川 哲典

 一般に患者さんは、さらには多くの医師も、臨床検査結果は正確無比のものである、或いは検査機器に検体をかければ、誰がやっても正確無比の結果が出る、と思い込んでいるようである。
 占いは「黙って座ればぴたりと当たる‼」?かもしれない。しかし臨床検査は『「黙って掛ければぴたりと当たる」、「何も考えなくとも、検体を検査機器にかければ、黙っていても結果はでてくる!それを送るだけでよい!一丁上がり‼』ではない。又そうありたくもない。「人は考える葦」、「我々臨床検査者は考える医療人」
 例えば、最近、血清鉄が7µg/dLと報告された症例を経験した。同じ検体を再度検査したがほぼ同じ結果であった。間違いではない。ならばそれで一件落着か!
 筆者はそこで次のステップを考えたい。はやりのCQ : Clinical Question(クリニカルクエスチョン)である。異常値が出た、そこからが検査科・検査部の腕の見せ所である。CQ1.改めて精度管理は適切か、確認。CQ2.担当主治医にパニック値の報告は? CQ3.①同時に末梢血のHbは?赤血球のMCV等血液像は?患者さんの病態とマッチしているか?前回値は?②低値の理由は食事、基礎疾患、現在の治療薬?③追加の検査は、フェリチンやTIBC、UIBC、場合によっては基礎疾患検索等の動きあり?
 検査及びパニック値報告は報告する事だけが目的ではない。次の対応策を検討してもらう為の報告でもあるはず!?では報告を受けての、次のアクションは進行中?と進みたい。
 もちろん、検査の役割は、測定と報告で十分という考え方もある。多忙な検査業務に加えて、原因やパニック値への対応を追ってもきりがないし、そこまでは検査の仕事ではないという考えもあろう。
 しかし筆者はまさに上記CQに答えてこそ、我々は単なる検査担当者ではなく、国家資格を有する臨床検査技師或いは検査専門医たる由縁ではないか、加えて重大事故予防にも資する事が出来ると考える者である。
 このような考えには賛否あるとは思うが、そういう議論が全ての臨床検査の現場であって欲しいものである。
 そんな事は当然!ならば、筆者としては嬉しい限りである。
 現場で頑張っている人たちには、既にそのような対応を織り込んでいると言われるかもしれない。老婆心ながら申し上げた次第である。
 我々臨床検査業務従事者は、その思い込みを裏切らないために、日々精度管理と標準化に勤しんでいる、といえよう。