2021年4月号(第67巻4号)

チーム医療の土台は学生時代に(続)

つくば国際大学医療保健学部
浦山 修

 2012 年3月に筑波大学を定年退職し、隣の土浦市にあるつくば国際大学医療保健学部に移って、今年で7 年目になる。この間、診療放射線、臨床検査、看護、理学療法、保健栄養の5学科で、生命倫理、医学概論、生化学、病態治療論、臨床医学概論(総論)、チーム医療論など多数の授業を担当してきた。
 筑波大学で医療のユニフィケーションをめざす土台作りが一応はできたと考えていたが、IPE(Interprofessio-nal Education)の展開を危うくしかねない問題のあることに、気が付いた。それは、専門基礎科目の教育の中で使用されている教科書に関係する。
 診療放射線学科あるいは臨床検査学科の1 年生のために臨床医学の入門書(臨床病態学や内科学一般など)はどれがよいのか、教科書を手にしてみて、驚いた。そこには、急性虫垂炎の項目が無い。虫垂炎はやや減少傾向にあるが、急性腹症としてはいまだに多い疾患である(福井・奈良、2008)。我われは、医学生時代に、「たかがアッペ、されどアッペ」として腹痛の診断・治療では大切な疾患として学んだ。現在のコメデイカルの状況を簡単に述べると、次のようになる。A学科で採用したA’の臨床医学の入門書には虫垂炎の記述がある。B学科のB’にはその記述がない。Bの教室では教員が補足すると思うが、補足しなかったとすれば、B学科の学生は虫垂炎の知識がないままに、チーム医療の合同授業(A+B+…)に参加することになる。虫垂炎を例にしたが、医療の実際を学ぶ上で必須の基本的な知識や概念が、各専門職の養成の間に“等しく”教育されていない可能性がある。
 IPEの展開において、それぞれの学生はどのような基礎的知識を獲得・共有すべきか、それを専門基礎分野の教育の中で教員はどのように連携して教授したらよいのか、全国的な議論が必要と思われた。もし「多職種連携のための…」という教科書を企画するのであれば、その場に、各出版社の方々にも加わっていただくと良いのかもしれない。