2020年8月号(第66巻8号)

自転車通勤ist 続編

国立感染研名誉所員、大妻女子大名誉教授
井上 栄

【通勤通学者】前回の執筆から15年経って社会も変わった。ウェブサイト「自転車通勤で行こう」の掲示板は、管理人が壮年になり多忙となったためか、閉じられた。
 道路交通法改正で自転車は原則車道通行となり、それに応じて自転車専用レーンも少しずつ増えている。駅前の駐輪場も整備された。通勤者は夜にも自転車に乗るのだが、明るいLEDランプが登場し、電池も高容量になった。ハブに組み込まれたダイナモを使えば、リム・ダイナモより軽く走れ、電池切れの心配もない。
 2011・3・11東日本大震災の後、自転車通勤者が増えたようだ。ロードバイクで職場まで長距離通勤する人もいる。リムとタイヤが軽くて慣性モーメントが小さいので、高速で走れる。高額物品なので、安心の保管場所が必要。
【ヒマな高齢者】筆者は定年となり、ヒマな時間は増えたが、筋力は衰え、膝の痛みも出てきた。そこでチンタラ走って楽しむ工夫をする。片面のみが靴底と結合するビンディングペダルを使い、足を引張り上げて車輪を回す。膝を保護し、いつもと異なる筋肉を使うのだ。車が多い所では、ビンディングなしのペダル反対面を踏む。
 サイクリングは、時間当たりエネルギー消費量はウォーキングとほぼ同じ。しかし風景は4倍見られる(時速16 vs 4km)。行動範囲は16(=42)倍。スマホの自転車ナビ画面よりもはるかに大きな景色を見る。非市街地では、空中の送電線を道標にして走る。ただし、それを前もって5 万分の1 地図で確かめておく必要がある。
 遠くの地で走るなら、折り畳み自転車を鉄道で運ぶ(輪行という)。駅の中で持ち運ぶのは重くてキツイので、畳んでからキャスターで動かすものが良い(英国製ブロンプトン®など)。
 追い風を利用できるのは、冬の関東平野だ。日本最大の平地で、利根川、多摩川、荒川、江戸川などの堤防上に自転車道がある。雪が降らず、空が晴れ、北風が吹く。風の強い日に川の上流へ輪行し、畳んだ自転車を開いて下流へ向かう。夕食に地元料理を摂り、電車が空くのを待って帰宅。