2020年2月号(第66巻2号)

医師のrisk management(RM)とinformed consent(IC)(続)

(株)日本食品エコロジー研究所
代表取締役社長
佐守 友博

 前回、同名の随筆をモダンメディアに投稿させていただいたのが平成13 年で今から17 年前になる。当時は医療機関においても、主として患者との間での揉め事を極力避けるためというrisk management(RM)の概念でリスクマネージャーを置いたり、RM委員会を設置したりすることが一般的であった。もちろん一般企業においても、顧客や取引先との揉め事を減少させる目的でRM部門や人員を配置することが常態となっていた。このRM の概念は、企業や医療機関の存続を脅かすような大事件から小さな揉め事などの様々なリスクにどう対応するかということが基本となっている。しかし、この概念が成熟していくとともに、医療機関や企業にとって本来守るべきは病院や会社といった自分の組織体ではなく、患者や顧客といったエンドユーザーの一般市民であるという概念に変化を遂げた。
 患者の安心安全を考えたSafety Management を医療機関や医師も基本概念として持つようになり、informed consent(IC)についても本当の意味で納得のできる説明を患者に対し医師が行えるようになってきた。さらには、患者が他の医師の意見を気軽に聴けるような仕組みも医療機関自らが構築してきたため、セカンドオピニオンを患者が求めることに対する主治医の抵抗がどんどん無くなっている。これは前回の随筆で述べた善意のプロ意識の回復のひとつであると考える。
 この17 年間で、いろいろな意味でよい変化(改革)が起きているが、法律面での整備が科学の進歩に追いつけていない業種も多々あり、そういった改革の遅れている業種においての企業運営は逼迫している。
 医療に関連した業種の中では、衛生検査所業がこれに当たり、さらなる時代に合った法整備が必要とされている。これを解決できれば、さらに我が国の医療は患者に対しより安全で安心なものへと変化することができるであろう。