2020年2月号(第66巻2号)

日本の四季彩巡り(2)

丹頂鶴の冬の目覚め

撮影地:
北海道
鶴居村 音羽橋

 北海道の釧路空港から車で30 分、丹頂鶴の棲息で有名な鶴居村の一角に、鶴が集まっている姿を遠方に望めることができる音羽橋がある。この日の朝5時、マイナス17度とかなり厳しい寒さの中、川の周辺の木々は霧氷となり、約50 羽の丹頂鶴はそれぞれが一本足で立って一夜を明かし、ジーッと静止状態を続けている。太陽の出る6時近くになると、目覚めた鶴が少しずつ動き始める。太陽が昇り始め、日が差し込む時刻になると、その集団の何羽かが羽ばたこうとしながら飛びはね、大きな鳴き声をあげている。丹頂鶴の目覚めの挨拶である。陽が差し込むようになりしばらくの間、川から発生する靄はもくもくと木々のまわりを包み、鶴の姿も靄の中にかすんで見える。氷の木々、出始めたピンクがかった太陽の光と朝靄の中の丹頂鶴の幻想的な風景は日本でしか味わえない素晴らしい世界である。音羽橋には毎年1月から2 月にかけて多くのカメラマンが集まり、200 メートル先の丹頂鶴のねぐらの方向に400mm以上の望遠レンズが一斉に向けられる。太陽が上がって1~2時間の間、ねぐらから手前の我々のいる方向に向かって、2羽から多くて5羽の単位で鶴が飛び立ち、運がよいと身近にその美しい飛翔を捉えることができる。それぞれの鶴が1日のお勤めを終え、また夕方には連隊を組んでこのねぐらに帰ってくる姿もここからそう遠くない鶴居村の菊池牧場で見ることができる。鶴居村は冬の北海道の醍醐味をたっぷり味わうことのできる素晴らしい場所である。

写真とエッセイ  北川 泰久

<所属>
東海大学名誉教授・東海大学付属八王子病院顧問
医療法人 泰仁会 理事長

<プロフィル>
昭和49年慶應義塾大学医学部を卒業し、後藤文男教授の神経内科教室に入局、米国べーラー大学留学後、川崎市立川崎病院に勤務、膠原病と脳卒中の研究を行い、平成4年より東海大学に赴任、東海大学大磯病院副院長を歴任し、平成15年より東海大学神経内科教授、平成17年より付属八王子病院病院長を9年間つとめ平成29年より東海大学名誉教授、付属八王子病院顧問、医療法人泰仁会理事長、現在に至る。

専門は脳卒中、頭痛、生活習慣病、認知症。日本医師会学術企画委員会副委員長をつとめ、日本医師会雑誌の編集に長年携わっている。写真歴は約15年、各季節の旬を盛り込んだ風景写真のカレンダーを11年間作成し続け、平成26年には春夏秋冬の風景写真130余りを盛り込んだ写真集、憧憬を発表。

今まで使用してきたカメラはペンタックスとニコン、現在はニコン850Dを主に使用している。