2019年12月号(第65巻)

日本の四季彩巡り(12)

天空に浮かぶ竹田城

撮影地:
兵庫県
竹田城 雲海

竹田城は日本の誇る天空の城である。雲海が出やすいのは9~11月の明け方から午前8時頃までで、移動性高気圧に覆われて、晴天で風が弱いことがその条件といわれている。11月、関西に出張する機会があり、以前からこの城を撮りたいと思っていたところ、やっと良い条件に恵まれ現地に向かった。深夜、麓の和田山町は霞で真っ白になり、雲海の撮影が十分に期待できる状態であった。竹田城の雲海の撮影は西側の円山川を隔てた標高350メートルの立雲峡から行うことにし、深夜、1時間半かかる登山道を頂上の展望台に向けて登り始めた。早く着きたいという逸る気持ちと、だんだん急になっていく山道で呼吸は荒くなり、汗びっしょりになって3時に頂上に着いた。まだ暗闇の中で竹田城がどうなっているかわからないが、どうやら立雲峡のこの場所は厚い霞のかなり上にいることは確からしい。朝6時、白みかける頃から竹田城が見えるようになり、雲海の上に浮かぶ古城の一部に霞がゆったりと流れ、望遠レンズで見ると城壁にかかっては消えたりしている。一番のシャッターチャンスは朝陽が古城の高い場所にかかる時と決め、その瞬間を待った。朝7時にその瞬間がおとずれ、厚い雲海に浮かぶ竹田城と朝陽に輝く古城を撮影することができた。竹田城を訪れ、雲海が見える確率は15%程度と言われている。直前の情報収集が効を奏して1回で撮影できたことは幸運であった。

写真とエッセイ  北川 泰久

<所属>
東海大学名誉教授・東海大学付属八王子病院顧問
医療法人 泰仁会 理事長

<プロフィル>
昭和49年慶應義塾大学医学部を卒業し、後藤文男教授の神経内科教室に入局、米国べーラー大学留学後、川崎市立川崎病院に勤務、膠原病と脳卒中の研究を行い、平成4年より東海大学に赴任、東海大学大磯病院副院長を歴任し、平成15年より東海大学神経内科教授、平成17年より付属八王子病院病院長を9年間つとめ平成29年より東海大学名誉教授、付属八王子病院顧問、医療法人泰仁会理事長、現在に至る。

専門は脳卒中、頭痛、生活習慣病、認知症。日本医師会学術企画委員会副委員長をつとめ、日本医師会雑誌の編集に長年携わっている。写真歴は約15年、各季節の旬を盛り込んだ風景写真のカレンダーを11年間作成し続け、平成26年には春夏秋冬の風景写真130余りを盛り込んだ写真集、憧憬を発表。

今まで使用してきたカメラはペンタックスとニコン、現在はニコン850Dを主に使用している。