2019年11月号(第65巻11号)

日本の四季彩巡り(11)

静寂なる山寺の秋

撮影地:
京都
西山 金蔵寺

秋になると、京都西山に10数年前から通っている山寺がある。金蔵寺という寺で約1300年前の奈良時代からの歴史があり、山門の静かなる佇まいと、本堂に向かう階段に積もる紅葉の美しさに惹かれいつも訪れたい気持ちになる。この寺に行く道は狭く、麓のバスの停留所から1時間歩くか、自動車で行くしかなく、訪れる人は限られ、京都市民でも知らない人が多い。ここの紅葉がとくに美しいのは紅葉の枝振りが大きく、山に向かって多くのもみじの木があり、数種類の色の紅葉のグラデュエーションが見られること。さらに、山門の上の階段のところでは、階段を覆うように枝が横に長く伸びて、大きなアーチになっていることである。風の強い雨上がりの朝には、階段のうえには紅葉の葉がふかふかと積もり、格別な美しさを示してくれる。京都の紅葉へは毎年11月23日の祝日に行くが、その年の気象条件により咲き始めだったり、すでに落葉した状態となっていたりして、いつも違う状態で、今回の写真は良い条件時に撮れた数少ない1枚である。山門は8時半に開くが、しばらくすると落ちた紅葉で足が滑らないように僧侶が階段の掃除をし始め、しばらくすると参拝者、観光客がくるので早い時間に行かないと良い条件で写真が撮れない。寺の上の本堂の周りには銀杏の木があり、かえでの赤と銀杏の黄色が地面に落ちて自分の陣地はここだと言わんばかりに一面に散っている姿にも感動する。金蔵寺は朝新幹線で京都について真っ先に行く寺でいつも心を癒やされる。いつまでも大切にしたい寺である。

写真とエッセイ  北川 泰久

<所属>
東海大学名誉教授・東海大学付属八王子病院顧問
医療法人 泰仁会 理事長

<プロフィル>
昭和49年慶應義塾大学医学部を卒業し、後藤文男教授の神経内科教室に入局、米国べーラー大学留学後、川崎市立川崎病院に勤務、膠原病と脳卒中の研究を行い、平成4年より東海大学に赴任、東海大学大磯病院副院長を歴任し、平成15年より東海大学神経内科教授、平成17年より付属八王子病院病院長を9年間つとめ平成29年より東海大学名誉教授、付属八王子病院顧問、医療法人泰仁会理事長、現在に至る。

専門は脳卒中、頭痛、生活習慣病、認知症。日本医師会学術企画委員会副委員長をつとめ、日本医師会雑誌の編集に長年携わっている。写真歴は約15年、各季節の旬を盛り込んだ風景写真のカレンダーを11年間作成し続け、平成26年には春夏秋冬の風景写真130余りを盛り込んだ写真集、憧憬を発表。

今まで使用してきたカメラはペンタックスとニコン、現在はニコン850Dを主に使用している。