2019年8月号(第65巻8号)

日本の四季彩巡り(8)

Kiss of Fire

撮影地:
長野県
諏訪湖祭湖上花火
水上大スターマイン

日本は夏になると全国で花火大会が開催される。歴史の深さと規模の大きさから「日本三大花火大会」と言われているのは秋田の大曲花火、茨城の土浦花火そして新潟の長岡花火であるが、これらに勝るとも劣らない花火として諏訪湖の湖上花火がある。毎年8月15日に開催されるが、太平洋戦争後の市民の復興を願う意味も含めて始まり今年で71回を迎える。四方を山に囲まれた諏訪湖から打ち上がるため、その音は山に反響し体の芯まで響き、迫力満点である。豪華絢爛で大規模なスターマイン(速射連発花火)で構成されるが、なかでも水上大スターマイン「Kiss of Fire」は最大の呼び物で、円形花火の上半分が湖上で花開き、だんだんと中央の初島にむかって両側から近づき初島の近辺で合体し、初島からは10号玉連発のスターマインが上がるという大掛かりな花火である。この花火を撮るには瞬時の失敗が許されず、緊張感は最大に達する。よい写真が撮れる最低限の条件として、風下で煙の影響を受けないこと、左右同時に上がっていることがあげられる。難しいのは左右同時に花開くといっても、わずかな差が必ずあり、シャッターをどこで開いてどこで閉じるかで写真変わってくる。また2つの花火が水面上でキスをする瞬間を捉え、その時、上昇して大きく開く大輪が構図に入っていないとKiss of Fireにならない。この瞬間をねらって毎年通っているもののまだ完成の域に達しないが、ある程度の条件に達する写真を2018年に撮ることができた。

写真とエッセイ  北川 泰久

<所属>
東海大学名誉教授・東海大学付属八王子病院顧問
医療法人 泰仁会 理事長

<プロフィル>
昭和49年慶應義塾大学医学部を卒業し、後藤文男教授の神経内科教室に入局、米国べーラー大学留学後、川崎市立川崎病院に勤務、膠原病と脳卒中の研究を行い、平成4年より東海大学に赴任、東海大学大磯病院副院長を歴任し、平成15年より東海大学神経内科教授、平成17年より付属八王子病院病院長を9年間つとめ平成29年より東海大学名誉教授、付属八王子病院顧問、医療法人泰仁会理事長、現在に至る。

専門は脳卒中、頭痛、生活習慣病、認知症。日本医師会学術企画委員会副委員長をつとめ、日本医師会雑誌の編集に長年携わっている。写真歴は約15年、各季節の旬を盛り込んだ風景写真のカレンダーを11年間作成し続け、平成26年には春夏秋冬の風景写真130余りを盛り込んだ写真集、憧憬を発表。

今まで使用してきたカメラはペンタックスとニコン、現在はニコン850Dを主に使用している。