2019年3月号(第65巻3号)

日本の四季彩巡り(3)

妖艶なるしだれ梅

撮影地:
三重県 鈴鹿の森庭園 しだれ梅

冬の厳しい寒さが和らぎはじめ、春の兆しを感じられる季節になると梅が咲き始めます。三重県の鈴鹿には数年前に開園された、しだれ梅が咲き誇る鈴鹿の森庭園があります。遠くに望む鈴鹿の山々を背景に、約200本のしだれ梅が立ち並ぶ風景はまさに圧巻の一言です。しだれ梅は桃色の濃い紅梅が多いですが白梅もあり、咲き始め (探梅) から、見頃(観梅) 、散り際 (惜梅) まで約3週間にわたりその美しさを楽しむことができます。桜は通常咲き始めから満開まで1週間、その後、桜吹雪3日間と、全部で約10日間の命ですが、梅は桜より長い期間、シャッターチャンスが期待されます。しだれ梅が特に美しいのは満開時、これでもかと長く伸びる枝の先まで桃色の梅の花が咲くときと、散りぎわの時期、緩やかな角度のある小山に梅の花びらが落ち、一面に桃色の絨毯が広がる状態のときです。特に雨上がりの後はそのシットリとした花びらの風情に感動します。梅の観賞は昼だけでなく、最近はライトアップも行われており、空に青みが残る夕暮れの時刻に、鈴鹿の山を背景とした満開のしだれ梅は是非撮りたいシーンです。この1-2年、この地に大勢の観光客が押し寄せていますので、是非早めの時間かライトアップ時に行くことをお勧めします。

写真とエッセイ  北川 泰久

<所属>
東海大学名誉教授・東海大学付属八王子病院顧問
医療法人 泰仁会 理事長

<プロフィル>
昭和49年慶應義塾大学医学部を卒業し、後藤文男教授の神経内科教室に入局、米国べーラー大学留学後、川崎市立川崎病院に勤務、膠原病と脳卒中の研究を行い、平成4年より東海大学に赴任、東海大学大磯病院副院長を歴任し、平成15年より東海大学神経内科教授、平成17年より付属八王子病院病院長を9年間つとめ平成29年より東海大学名誉教授、付属八王子病院顧問、医療法人泰仁会理事長、現在に至る。

専門は脳卒中、頭痛、生活習慣病、認知症。日本医師会学術企画委員会副委員長をつとめ、日本医師会雑誌の編集に長年携わっている。写真歴は約15年、各季節の旬を盛り込んだ風景写真のカレンダーを11年間作成し続け、平成26年には春夏秋冬の風景写真130余りを盛り込んだ写真集、憧憬を発表。

今まで使用してきたカメラはペンタックスとニコン、現在はニコン850Dを主に使用している。