2018年7月号(第64巻7号)

日本の四季彩巡り(7)

海の三日月

撮影地:
沖縄県 八重山
幻の島 浜島

7月になると沖縄、八重山地方は梅雨があけて本格的な夏のシーズンが始まる。梅雨明けの沖縄周辺の海は台風の影響もなく、海の色も鮮やかで特に撮影には絶好の時期といわれている。石垣島から小舟で40分、小浜島の近くに、干潮時に真っ白な砂浜を現す幻の島、浜島がある。船が島に近づくとその周辺の海はまさにエメラルドグリーン色となり、海底に珊瑚礁のあるところでは黒ずんだ色となる。船は大きな珊瑚礁をよけながら浜島の浅瀬に着岸する。ここの写真を撮りたいと思ったのは最も潮が引く干潮時には三日月型の浜になり、空中のハングライダーから撮影された写真がとても美しかったからである。切れ目のある三日月の形は中途半端な干潮ではあらわれず、3回目でやっと描いていた干潮の瞬間がきた。しかしこの三日月はやや高いところから撮らないとうまく描写できない。このときラッキーにもやや大きな船が三日月型の下限の位置に停泊していて、そこで休んでいた船長さんにお願いして船の上方の運転台の近くから写真を撮る許可をえた。全部の三日月が入る構図で、夏の白い雲を入れ、ラッキーにも人魚も現れ、夏の幻の島を撮影することができた。浅瀬の海に打ち寄せる小さな波は夏の太陽をいっぱい浴びて輝き、左右、上下方向から来て交叉する波の光景は夏を満喫できる幸せな世界である。

写真とエッセイ  北川 泰久

<所属>
東海大学名誉教授・東海大学付属八王子病院顧問
医療法人 泰仁会 理事長

<プロフィル>
昭和49年慶應義塾大学医学部を卒業し、後藤文男教授の神経内科教室に入局、米国べーラー大学留学後、川崎市立川崎病院に勤務、膠原病と脳卒中の研究を行い、平成4年より東海大学に赴任、東海大学大磯病院副院長を歴任し、平成15年より東海大学神経内科教授、平成17年より付属八王子病院病院長を9年間つとめ平成29年より東海大学名誉教授、付属八王子病院顧問、医療法人泰仁会理事長、現在に至る。

専門は脳卒中、頭痛、生活習慣病、認知症。日本医師会学術企画委員会副委員長をつとめ、日本医師会雑誌の編集に長年携わっている。写真歴は約15年、各季節の旬を盛り込んだ風景写真のカレンダーを11年間作成し続け、平成26年には春夏秋冬の風景写真130余りを盛り込んだ写真集、憧憬を発表。

今まで使用してきたカメラはペンタックスとニコン、現在はニコン850Dを主に使用している。