2018年6月号(第64巻6号)

日本の四季彩巡り(6)

ミヤマキリシマに包まれて

撮影地:
大分県
平治岳

6月の梅雨入りの頃、九州大分の九重連山にある平治岳(ひいじだけ)は全山ピンクのミヤマキリシマに覆われる日本で唯一の山である。この山に登りたいと思い、2年前に登山したが、あいにく蛾の幼虫がミヤマキリシマの花の芽を食い荒らしてしまう被害があり、その一部しか美しい姿を見ることができなかった。そのリベンジで再びこの地を訪れた。夕方大分空港からレンタカーを借りて男池という水源地の駐車場に着き、仮眠してから、ヘッドライトをつけて登山を開始し、約3時間かけて頂上をめざし朝8時頃に到着した。この時期は多くのハイカーがいるが早い時刻に着いたので人もまだ少なかった。余裕のあるハイカーは麓にある法華経温泉に泊まり、そこから約2時間かけて平治岳を目指す。今年は虫の被害もなく、平治岳は南峰斜面も本峰斜面も全山満面に咲き誇るミヤマキリシマで覆われ、登山道は前後左右すべてミヤマキリシマに囲まれ、その美しい姿に感動した。写真は本峰を見上げる位置から撮影した。ミヤマキリシマが見頃となる頃は梅雨入りの時期で、入念な気象情報を得ておくことが大切である。この年は撮影の10日後に福岡県南部と大分には集中豪雨による災害が発生した。今回は幸運にもミヤマキリシマのピンクと空の青、アクセントとなる雲という最高の条件で撮影できた。

写真とエッセイ  北川 泰久

<所属>
東海大学名誉教授・東海大学付属八王子病院顧問
医療法人 泰仁会 理事長

<プロフィル>
昭和49年慶應義塾大学医学部を卒業し、後藤文男教授の神経内科教室に入局、米国べーラー大学留学後、川崎市立川崎病院に勤務、膠原病と脳卒中の研究を行い、平成4年より東海大学に赴任、東海大学大磯病院副院長を歴任し、平成15年より東海大学神経内科教授、平成17年より付属八王子病院病院長を9年間つとめ平成29年より東海大学名誉教授、付属八王子病院顧問、医療法人泰仁会理事長、現在に至る。

専門は脳卒中、頭痛、生活習慣病、認知症。日本医師会学術企画委員会副委員長をつとめ、日本医師会雑誌の編集に長年携わっている。写真歴は約15年、各季節の旬を盛り込んだ風景写真のカレンダーを11年間作成し続け、平成26年には春夏秋冬の風景写真130余りを盛り込んだ写真集、憧憬を発表。

今まで使用してきたカメラはペンタックスとニコン、現在はニコン850Dを主に使用している。