2018年1月号(第64巻1号)

日本の四季彩巡り

丹頂鶴のロマンス

撮影地:
北海道阿寒郡
鶴居町

毎年、冬になると北海道の釧路北部の釧路湿原に丹頂鶴を撮りに行く。丹頂鶴は日本を代表する鳥でその飛来する美しさに心が引かれる。撮影のポイントは3つあり1つは気温マイナス20度以上の冷え切った朝、音羽橋から霧氷に囲まれた川の中の丹頂鶴のねぐらを狙って撮る場面、2つめは夕陽に染まる空の中、20羽近い丹頂鶴がV字型の連帯を組んでねぐらに帰る場面、そして3つ目は今回掲載した、丹頂鶴が求愛しているロマンスの場面やダンスを楽しんでいる場面である。撮影場所は鶴居村の伊藤サンクチュアリで、頭の黒い雄と赤い雌が上方を向き、“キュキュキュ”と高らかに声を上げている。その声は求愛のサインとされ、その後2羽は首をからませて、外から見ると信じがたいのだが1本の首となり、しばらくして、また元通りに戻った。二羽の鶴が平行して高らかに声を上げる瞬間はよく見られるが、向かい合っての瞬間を見ることは稀である。この写真は、自分自身丹頂鶴の行動を余りよく知らない初期の頃の写真で、この瞬間を狙っていたのではなく、キュキュキュという声に思わずカメラを向けてとれた、大変幸運なショットである。小雪の降る中、そばにいる一羽の丹頂鶴は求愛する二羽に圧倒されたのか終始うずくまっていた。この写真を見た患者さんのご両親が目出度いシーンなので、是非、息子の結婚のお祝いに持たせてあげたいとのお話を聞き、喜んでプレゼントした。

写真とエッセイ  北川 泰久

<所属>
東海大学名誉教授・東海大学付属八王子病院顧問
医療法人 泰仁会 理事長

<プロフィル>
昭和49年慶應義塾大学医学部を卒業し、後藤文男教授の神経内科教室に入局、米国べーラー大学留学後、川崎市立川崎病院に勤務、膠原病と脳卒中の研究を行い、平成4年より東海大学に赴任、東海大学大磯病院副院長を歴任し、平成15年より東海大学神経内科教授、平成17年より付属八王子病院病院長を9年間つとめ平成29年より東海大学名誉教授、付属八王子病院顧問、医療法人泰仁会理事長、現在に至る。

専門は脳卒中、頭痛、生活習慣病、認知症。日本医師会学術企画委員会副委員長をつとめ、日本医師会雑誌の編集に長年携わっている。写真歴は約15年、各季節の旬を盛り込んだ風景写真のカレンダーを11年間作成し続け、平成26年には春夏秋冬の風景写真130余りを盛り込んだ写真集、憧憬を発表。

今まで使用してきたカメラはペンタックスとニコン、現在はニコン850Dを主に使用している。