2017年7月号(第63巻7号)

旅先、街角のスナップ(7)

舟屋の里

機材:LEICA M9-P
レンズ:Summicron-M 90mm/f2.0

どこかで見た、舟屋に雪が降りしきる写真が印象に残り、いつか自分の目でみたいと思っていた伊根(京都府与謝郡)を訪れたのは2年前でした。舟屋とは湾の海面にせり出し、一階はいわば船のガレージ、二階には居室を備え、漁業に特化した独特の建築物のこと。江戸時代中期から存在しているとされる舟屋は、今も伊根湾をぐるりと取り囲んで200棟以上が残っており、国の重要伝統的建造物保存地区に指定されています。
海に面していたら波が入り込んできて、さぞかし維持が大変なのでは?と思ってしまいますが、それが問題にならないのは特殊な地形の恩恵を受けているため。伊根湾は日本海に面していながら湾の入口が南を向いており、その入口を青島という島が塞いでいて、一年を通してわずか30cm程度の潮位の変化しかないのです。そのおかげで漁場としても最高なんだとか。もちろん堪能してまいりました(笑)。
海も静かなら、町も静か。舟屋が脚光を浴びてもそこに暮らす人々の生活は変わりません。特に静かな早朝、海を眺めながらの散歩は心が洗われるようでした。舟屋を改築した宿がいくつかありますので、一日を通して伊根湾の自然を五感で感じることをお勧めします。

写真とエッセイ  水地 大輔

<所属>
東京逓信病院 血液内科医長 医学博士

<略歴>
1994年 群馬大学医学部卒業、東京医科歯科大学第一内科入局
2004年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修了
2005年 東京医科歯科大学血液内科助手
??? 同年10月より現職

<主な展示>
・個展
「ordinary days」神楽坂 キイトス茶房(2008年)
・主なグループ展
「水」渋谷 ギャラリールデコ(2014年)
「旅ライカ」渋谷 ギャラリールデコ(2015年)他