2017年6月号(第63巻6号)

旅先、街角のスナップ(6)

紫陽花の咲く頃

機材:LEICA M9-P
レンズ:Summilux-M 35mm/f1.4 ASPH

6月5日頃から始まる二十四節気は「芒種」。稲の穂先の針のような突起を芒(のぎ)といって、「芒種」には稲や麦など穂の出る植物の種を蒔くころ、という意味があります*1。いよいよ田植え真っ盛りというところでしょうか。
今月の一枚は、このシリーズでは度々登場する山梨県七面山と身延山を結ぶ参道の宿場町として発展した、赤沢宿で撮影しました。身延線が開通した大正から昭和初期にかけて参詣客は急増し赤沢宿は隆盛を極めましたが、道路の整備、交通の便が良くなるに従い、昭和30年代頃から利用客は激減したそうです。しかし、当時を偲ばせる家並みや石畳は今も昔のまま残されており、平成5 年には国の重要伝統的建造物群保存地区として認定されました*2。宿の一部は観光案内所兼カフェ、ギャラリースペースとしてリノベーションされ、散策の格好の休息場所となっています。
「雨に咲いてたつぶらな花びら 恋の予感に揺れて虹色に染まるの」と歌われる紫陽花(原由子「あじさいのうた」より)。可憐な花と素敵な出来事があれば、じめっとした梅雨も悪くないかもしれませんね。「芒種」の次の二十四節気は「夏至」。暑い夏がすぐにやってきます。

*1「旬を楽しむ日めくり七十二候」白井明大 文春文庫

*2早川町観光協会HP

写真とエッセイ  水地 大輔

<所属>
東京逓信病院 血液内科医長 医学博士

<略歴>
1994年 群馬大学医学部卒業、東京医科歯科大学第一内科入局
2004年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修了
2005年 東京医科歯科大学血液内科助手
??? 同年10月より現職

<主な展示>
・個展
「ordinary days」神楽坂 キイトス茶房(2008年)
・主なグループ展
「水」渋谷 ギャラリールデコ(2014年)
「旅ライカ」渋谷 ギャラリールデコ(2015年)他