2017年5月号(第63巻5号)

旅先、街角のスナップ(5)

実は本の街

機材:LEICA M8.2
レンズ:Summilux-M 50mm/f1.4

私が勤務する病院の、お堀を挟んだ対岸は神楽坂。古くは花街として栄え、今はその街並みがパリを彷彿とさせることや日仏学院などフランス関係の施設が多いことからフランス人がとても多く住んでおり、国際色豊かな街です。レストランもフレンチだけでなく、イタリアンやスパニッシュ、蕎麦、和食も激戦区。食の街でもあります。
一歩脇に入れば、石畳の路地に昔ながらの居酒屋、割烹の立ち並ぶ光景は今も健在。その中には、「ホン書き旅館」として知られた「和可菜」もありました。ホン書きとは小説家や脚本家のことで、五木寛之や開高健、山田洋次など著名な作家さんたちが、和可菜にカンヅメになって作品を書き上げたそうです(残念ながら昨年閉館となりました)。少し歩みを進めて地蔵坂に入るところには、夏目漱石や尾崎紅葉が原稿用紙を愛用していたという「相馬屋」が今も健在。
神楽坂上交差点をさらに上がっていくと街の雰囲気が変わり、スーパーや食料品店など生活に密着した商店が連なっています。その中には個人経営の本屋さんが今も健在で二軒あります。ついつい立ち寄ってしまうブックバーやブックカフェも増え、近年は古本市や本のイベントが多く開かれるようになってきました。さらに江戸川橋の方へ歩みを進めると、出版社や印刷、製本会社がとても多いことに気がつきます。
古くから文藝の街だった神楽坂は、今も本の街なのです。

写真とエッセイ  水地 大輔

<所属>
東京逓信病院 血液内科医長 医学博士

<略歴>
1994年 群馬大学医学部卒業、東京医科歯科大学第一内科入局
2004年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修了
2005年 東京医科歯科大学血液内科助手
??? 同年10月より現職

<主な展示>
・個展
「ordinary days」神楽坂 キイトス茶房(2008年)
・主なグループ展
「水」渋谷 ギャラリールデコ(2014年)
「旅ライカ」渋谷 ギャラリールデコ(2015年)他