2012年12月号(第58巻12号)

癒しの風景画(12)

冬近し (東京都)

1000mm×800mm

〇絵のモチーフ
モチーフとは、文学や美術などで創作の動機となった思想や題材のことです。絵にはありとあらゆるものが描かれています。
若い頃は平気で人物画を描いていましたが、その奥深さを知らない若気の至りでした。
今は風景が中心です。どんな場所でも、絵では省略や追加ができるので、絵にすることは可能ですが、やはり描きたい気分にさせてくれる風景を描くと楽しいです。遠近法で遠くまで見渡せて、広さを感じさせる風景はやはり大きな号数の絵で描きたくなります。風景の一部や、花が主体に来るものは小品が向いていると思います。
絵の世界に決まりは無いので、どのように描いても自由ですが、あまりにとっぴなものは、途中で描くのが苦しくなってきて断念することになります。
元気なうちに風景のネタは沢山集めておこうと、遠い地方の健診バイトを受けては、旅行がてら写真を撮りためています。

〇今月の絵:冬近し
以前は世田谷区に住んでいたので、子供たちと時々「砧公園」まで遊びに行きました。東京のイチョウの黄葉は遅くて、12月に最盛期を迎えます。この公園のイチョウは大きくて見事です。この日はもう夕暮れに近く、太陽は傾きかけていましたが、逆光に輝くイチョウの葉は限りなくきれいでした。地上に落ちた落ち葉も大量で、地面を埋め尽くし見事です。その後も毎年イチョウの黄葉を見に行っていたのですが、こんなに見事なのはこの年だけでした。
紅葉の本当に綺麗な時期は数日しかないそうです。この時に合わせて写真を撮りに行くのは難しいです。
この絵はH18年4月、第18回現代パステル協会展で入選しました。
1年間、私の風景画にお付き合いいただきありがとうございました。来年はガラッと変わって、最近凝っている半立体作品を中心に構成していく予定です。よろしくお願いいたします。

多摩川の魚たち:http://homepage3.nifty.com/tamafish/
絵画のギャラリー:http://r-kaiga.suz.cc/

絵とエッセイ 鈴木 孝成

昭和28年1月12日
信州松本にて生を受ける

<職歴>
昭和57年…東京医科大学医学部卒業、放射線医学教室大学院に入学
昭和61年…東京医科大学放射線医学教室助手
平成2年…米国アリゾナ大学メディカルセンター核医学に一年間留学
平成4年…東京医科大学放射線医学教室講師
平成7年…東京医科大学退職、町田市にて、中町クリニックを開業。MRIを導入して地域の画像センターとしての機能を担っていた。
平成23年…中町クリニック閉院。

<絵の略歴>
幼い頃から絵や工作に熱中していた少年だったそうである。小学生の頃は、松本の月草絵画教室に通っていた。中学になって押し付けがましい美術の授業に嫌気がさして、物理部で飛行機ばかりやっていた。高校では、美術室入りびたりの生活となった。主に人物の油絵を描いていて、二科展絵画部に入選。大学は1年浪人後、飛行機好きが高じて東海大学航空宇宙学科に入学。その後も数年は夏休みに高校の美術部へお邪魔して二科展の油絵を製作し、2度目の二科展入選を果たす。その頃にPC-8001が発売されてパソコンブームとなり、ゲーム開発に熱中して絵の事はすっかり忘れる。芸夢狂人のペンネームで、雑誌に記事を載せたり、九十九電気にゲームソフトを卸したり大忙しであった。
東海大学卒業の頃はすっかり不況のまっただなか、希望する航空関係の企業に勤められる可能性も無く、東京医大を受験したところ、奇跡的に入学できて、ここからまた6年間の学生生活が始まった。
東京医大卒業後結婚し、放射線科医局へ入局後は忙しい新米医者の生活になり、絵を描くのは、子供とスケッチをする程度であった。
そして、ふと気づくと、50歳も過ぎ中年真っ只中であった。ひょんなきっかけからリアルな風景画の世界にはまり、現在に至っている。