2009年7月号(第55巻7号)

墨画にのめりこんで

ひまわり(向日葵)

平成9年の秋、墨絵の会に入ろうと思った銀座の墨絵展で、一番ひきつけられたのが“向日葵”の絵であった。その後も、毎年の展覧会で誰かが向日葵を描いて出している。夏を代表する豪勢な花であり、輝き、憧れ、希望の表徴のような花である。
はじめは、少し大空を仰ぎ見るような形で咲き、花の周りをとりまく舌状花はひとつずつ見ても勢いのよい形をしており、中心には無数の筒状花が集まって、そこが褐色のもの、黄みのかかったもの、あるいは緑色がかかったものがあり、ひまわりの種類によって色とりどりであり面白い。
さて絵に描くとなると、大輪の花はいくらでも景気よく描けるし問題はないが、茎と葉を描く段になると戸惑ってしまう。何といっても高さが2~3mにもなる大きい草であり、周りに張り出している葉は日光を一杯浴びようと四方に伸びて大きい。そのとおりに描きだすと、絵としての構図が成り立ちにくいのである。ゴッホは、向日葵の花を集めて花瓶に指して名画を描いた。花瓶にさして、花の向きを思い思いの方向に向けて描くのもひとつの解決策である。
向日葵は夏休みの花と思っていたが、神代植物公園に8月上旬に出かけたら、もう盛りを過ぎ、多くの向日葵の花が重さに耐えられず下向きに垂れかけており、半ば枯れかけているのもあった。
近年広い畑一面にたくさんの向日葵を植え、観光の誘いにしている写真をよく見かける。観光の後は、種を取って動物の飼料にしたり、また油を絞って食用に供するのだろうと思う。

絵とエッセイ 藤本 吉秀

大正15年(昭和元年)生まれ。昭和の年号がそのまま年齢になった。

<職歴:内分泌外科医>
もと東京女子医大内分泌外科教授。1987~1989の2年間国際内分泌外科学会会長を務めた。
今は癌研有明病院、日本赤十字社医療センター、調布東山病院で甲状腺診療をしている。

<絵の略歴>
昭和59年、八丈島から贈られた黄色のシンピジウムがとても美しいので色紙に描いてから、季節の草花を色紙に描くのが趣味となった。平成10年、柏市で甲状腺外科検討会がひらかれた時、会場の近くの画廊で色紙の個展をした。
その後、松下黄沙(Group 82)について墨絵三昧。
2人展(平成14年)、12人展(平成16年)をはじめ、春、初夏、秋にそれぞれ各種グループ展に出展。

<運動>
ずっと以前のことになるが、学生時代、一高、東大を通してボートを漕ぎ、昭和24、25年8人で漕ぐエイトで連続全日本選手権制覇。

はじめの1年間は、「色紙に季節の草花を描く」をテーマにして出します。
次の1年間は、「墨画にのめりこんで」として、風景、植物、仏像など何でも取り上げて描きます。