2008年7月号(第54巻7号)

色紙に描く季節の草花

朝顔

朝顔は、子供の時から8月、夏休みの朝に咲く花と覚えこんでいるが、実際は7月には咲き始める。庭に出ると、蔓が屋根に向かって上っており、青い花、赤い花、白い花が色とりどりに咲き、葉には朝露が光っている。朝日が昇り午前10時をすぎて照りつける頃になると、花の勢いがなくなってくる。文字通り朝顔である。

中学時代園芸の時間があった。教師は、顔の長い背の高い先生でとても温和な方だった。大きい甕に一杯油粕を基にした肥料を作っておられ、その蓋がとられたとたんに物凄いアンモニア臭がし、あれは朝顔にやる肥料だそうだと聞いてから園芸が嫌いになったことがあった。昔の中学生は単純なものだった。

最近は、毎年7月になると谷中の朝顔市の朝顔の鉢 を贈ってくださる方があって、夏が来たことを知る。ちょうど市が立っている時にその近くに出かける用事があって朝顔市を見たが、通りの両側にびっしりと朝顔の鉢が並んで売られており、江戸の下町の風情を満喫した。

朝顔や釣瓶とられてもらい水 千代女

何とも風情のあるいい句だと感心する。ただ一度くらいならもらい水ですましても、いつまでもそれでは生活が成り立たない。

絵とエッセイ 藤本 吉秀

大正15年(昭和元年)生まれ。昭和の年号がそのまま年齢になった。

<職歴:内分泌外科医>
もと東京女子医大内分泌外科教授。1987~1989の2年間国際内分泌外科学会会長を務めた。
今は癌研有明病院、日本赤十字社医療センター、調布東山病院で甲状腺診療をしている。

<絵の略歴>
昭和59年、八丈島から贈られた黄色のシンピジウムがとても美しいので色紙に描いてから、季節の草花を色紙に描くのが趣味となった。平成10年、柏市で甲状腺外科検討会がひらかれた時、会場の近くの画廊で色紙の個展をした。
その後、松下黄沙(Group 82)について墨絵三昧。
2人展(平成14年)、12人展(平成16年)をはじめ、春、初夏、秋にそれぞれ各種グループ展に出展。

<運動>
ずっと以前のことになるが、学生時代、一高、東大を通してボートを漕ぎ、昭和24、25年8人で漕ぐエイトで連続全日本選手権制覇。

はじめの1年間は、「色紙に季節の草花を描く」をテーマにして出します。
次の1年間は、「墨画にのめりこんで」として、風景、植物、仏像など何でも取り上げて描きます。