2007年6月号(第53巻6号)

ヒマラヤの詩―山と花に魅せられて

ノモカリス

ヒマラヤの東に位置する広大な中国横断山脈は、標高4,000mを越える「チベット高原」を取り囲む「ヒマラヤ山脈」、「カラコルム山脈」、「クンルン山脈」とほぼ同時期に形成された山脈で、雲南、四川省にまたがり南北に連なった山群です。雲南省は中国の南西部に位置し、ミャンマー、ベトナム、ラオスに接しています。横断山脈で有名な山としては梅里雪山、玉龍雪山、ミニアコンカ山などがよく知られていて、標高5,500m以上の山です。植物の豊富な雲南省には、中国全土のおよそ半分にあたる15,000種類の植物が分布しているといいます。南部の河口県から標高6,740mの北部の梅里雪山(メイリーシュエシャン)主峰までのさまざまな環境が多種類の植物を育んでいるのだそうです。

今回、雲南省のシャングリラと梅里雪山周辺へのフラワーウォッチングに行ってきました。ネパールやチベットと違って、移動は殆どランドクルーザーで、スタッフはドライバーが中心です。ツアーリーダーが花のある場所を心得ていて、近くで車を止めて、丘、といっても4,000mに近いところですが、そこから歩いて花を探して写真を撮ります。青いケシもあれば、黄色いケシ、しゃくなげ、つつじ、スミレ、インカルピリア、アツモリ草、アネモネ、クレマチス、ノモカリス、テンナンショー、エーデルワイス等々。しかし油断は禁物、高山病にならないように、ゆっくり、ゆっくりです。

道路沿いの両脇の丘には青いケシや黄色いケシがたくさん咲いていて、ネパールやチベットで探し回ったのと比較して、その量の多さに驚きました。一ヶ所にとどまって1日中写真を撮っても足りないくらいです。宿泊はホテルなので、お湯の出が悪くてシャワーを使うのもままならないけれど、テント生活よりはましです。

写真のノモカリス(Nomocharisforrestii)はユリ科のノモカリス属で、標高3,000~3,500mの比較的よく日の射し込む雑木林の林床、林縁、または草原などに生えます。開花時の草丈25~60cm。花の数は少なく、ツアーリーダーのT氏の案内でなければ見つけるのは難しいと思いました。日本にも球根が入っていますが、暖地では育ち難いそうです。

(撮影:2001.6 中国, 横断山脈・雲南省)

写真とエッセイ 後藤 はるみ

1938年 東京に生まれる
1963年 東京理科大学理学部卒業後、代々木病院検査室勤務を経て東京保健会・病体生理研究所、研究開発室勤務
1978年 東京四谷の現代写真研究所に第3期生として、基礎科、本科1、本科2、専攻科、研究科で7年間写真を学ぶ。
1984年 写真家・竹内敏信氏に師事、現在に至る
1999年 病体生理研究所定年退職

・日本山岳会所属 ・エーデルワイスクラブ会員
・全日本山岳写真協会 会員
・写真展「視点」に3回入選
・全日本山岳写真協会主催の写真展に毎年出品
・その他、ドイフォトプラザ等でグループ展多数