2007年4月号(第53巻4号)

ヒマラヤの詩―山と花に魅せられて

シャクナゲ

ポカラから専用のマイクロバスでホテルへと向かいます。いよいよ明日からトレッキング開始です。夜は危険だから外出は避けるようにとの注意を受けました。沿道には所々に銃を持った兵士が見回っています。これから本当に大丈夫かと少し心配になりました。翌日、出発前にホテルから5分くらいのフェワ湖畔まで散歩、アンナプルナ山群、マチャプチャレ(6,993m)がうっすらと見えます。やはり3月の山は霞んでいて写真にするのは難しい。10時半にガイドたちが迎えにきて車でナヤプルまで行きました。ナヤプルに着くと、政府軍とマオイストとの戦闘の残骸、丸焦げのバスが路上に放置されていました。そこからいよいよトレッキング開始です。所々に小さいロッジがあり、屋根葺きしている村人、子供たち、竹かごに荷物を入れて頭に担いでいる女性、学生、ロバの隊商、山側に延々と続く段々畑等々…。27年前に来たときとあまり変わっていなくて懐かしい光景です。

出発してから2日め、一人が斜面に一本のシャクナゲの木を見つけました。花は数えるほどしかなかったのですが、私たちは歓声をあげました。するとシェルパの一人が登っていって3輪折って私たちに呉れました。本当にこのあとシャクナゲに出会えるのかしらと気になりました。3日めの朝、朝焼けのアンナプルナ、マチャプチャレなど素晴らしい眺めに興奮してベランダや屋上で写真撮影。朝食後、村外れより歩き出しました。木立の合間にアンナプルナ山群と村落が見え隠れします。急に展望が開け、明るい台地に茶屋があり、周りに満開の見事なシャクナゲの木に皆で歓声を上げました。いよいよシャクナゲ地帯に入った感じで、見上げる斜面の所々に満開の赤いシャクナゲの木、うっすらとピンク色の木など、時期としてはちょうど良かったようです。今日はタダパニ(2,721m)泊まり。昼食時から雨になりやがて霰になりました。瞬く間に外は真っ白。冷え込んできたのでみんなで炬燵に入りました。夕食後は村人たちが歌とダンスを披露してくれるということで、一人200ルピー(日本円にして約300円)の募金を払いました。これは村道などの修理に使用するためだといいました。それにしてもネパール人は踊りが上手。私たちのガイドも踊り出しました。後半はガイドに誘われ、私たちも一緒になって踊りました。これを皮切りにして、お別れパーティーの時にも、ガイド・シェルパ・ポーターと私たちは、キャンプファイアーを囲んで一緒になって踊りました。

さすがに「全山が赤く染まる」との噂のように、ゴレパニ峠のシャクナゲ(ネパールではラリグラスという)は本当に見事な群落でした。政情不安定といわれた時期にも思い切って来たことに、そして何事もなく無事にシャクナゲ原生林を満喫できたことに、感謝をこめて「ナマステ!」。

(撮影:2006.3 ネパール, アンナプルナ山群)

写真とエッセイ 後藤 はるみ

1938年 東京に生まれる
1963年 東京理科大学理学部卒業後、代々木病院検査室勤務を経て東京保健会・病体生理研究所、研究開発室勤務
1978年 東京四谷の現代写真研究所に第3期生として、基礎科、本科1、本科2、専攻科、研究科で7年間写真を学ぶ。
1984年 写真家・竹内敏信氏に師事、現在に至る
1999年 病体生理研究所定年退職

・日本山岳会所属 ・エーデルワイスクラブ会員
・全日本山岳写真協会 会員
・写真展「視点」に3回入選
・全日本山岳写真協会主催の写真展に毎年出品
・その他、ドイフォトプラザ等でグループ展多数