2007年2月号(第53巻2号)

ヒマラヤの詩―山と花に魅せられて

ガネッシュ・ヒマール I 峰(7,429m)

東西にのびる大ヒマラヤ山脈は約2,400kmあり、ネパール・ヒマラヤはそのなかの3分の1、800km余りあって、核心地帯に位置します。東から西へ、カンチェンジュンガ、クーンブ(エベレスト)、ロールワリン、ランタン、ガネッシュ、マナスル、アンナプルナ、ダウラギリ、カンジロバ、サイバルの10の山群に細分されます。

ガネッシュ山群は人気のあるエベレスト、アンナプルナと比べて、あまり知られていないし、トレッキング隊も私たち以外には外国人1隊、それも3人に出会っただけでした。ここには、山岳写真家F氏が30年前に訪れて撮影した写真(白黒)を、再び、それもすべての山群を撮影し直すという壮大な構想の一つに、私たちは同行したのです。従って撮影地は貸し切り、撮影条件を懇切にご指導を受けましたが、自然条件は、思い通りのイメージにはなかなかなりません。

ガネッシュ・ヒマールI峰はカトマンドゥの北北西80km, ネパールと中国チベット自治区との国境上にあるガネッシュ山群の最高峰。1953年春にニュージーランド登山隊、1954年春にマナスルより転進した日本山岳会隊もトロ・ゴンパ氷河にベース・キャンプを置き、登頂をめざしましたが敗退。1955年秋、フランス・スイス合同登山隊が東面のサンジェ氷河上の4,500mからのキャンプを進め、3隊員が7時間にわたり氷雪の登高を続け、初登頂に成功しました。

撮影地のトロ・ゴンパ氷河は、標高4,100mで、昼間はカッターシャツで過ごせますが、夜になると急激に冷えこみ、テント内でシュラフを二重にして、ダウンジャケット上下を着込み、金属製の水筒にお湯を入れて、湯たんぽ代わりにして寝ても寒いくらいの気温でした。シェルパたちは、寒くて横になって寝ると地面から冷えてくるので、座って過ごしたと言っていました。ポーター達はテントもなく、岩屋のようなところで一晩中たき火をして過ごすとのこと。朝、モーニングティーと洗面用のお湯が配られ、使用後に洗面器を外に出しておいたら、残ったお湯が瞬く間に凍ってしまいました。

(撮影:2004.11 ネパール, ガネッシュ・ヒマール)

写真とエッセイ 後藤 はるみ

1938年 東京に生まれる
1963年 東京理科大学理学部卒業後、代々木病院検査室勤務を経て東京保健会・病体生理研究所、研究開発室勤務
1978年 東京四谷の現代写真研究所に第3期生として、基礎科、本科1、本科2、専攻科、研究科で7年間写真を学ぶ。
1984年 写真家・竹内敏信氏に師事、現在に至る
1999年 病体生理研究所定年退職

・日本山岳会所属 ・エーデルワイスクラブ会員
・全日本山岳写真協会 会員
・写真展「視点」に3回入選
・全日本山岳写真協会主催の写真展に毎年出品
・その他、ドイフォトプラザ等でグループ展多数