2006年11月号(第52巻11号)

心に残る、山と花

ジャンダルム初冠雪

紅葉の時期が終わると、間もなくして“山眠る”季節がやってきます。ともすると、紅葉と同時に初冠雪が見られることもあります。涸沢には何度か訪れていますが、その年は紅葉もあまり芳しくなく、帰りの日は雪が舞い始め、上高地に着いてタクシーに乗ったら、運転手が立山で大量遭難があったことを話してくれました。交通の便が良くなり、簡単に3,000m級の山に入れるようになったのは結構なことですが、どのような山でもそれなりの装備と心構えは必要です。秋の山とはいえ、一度天候が崩れると冬の様相に激変することもあります。安全登山をするためには、目的の山についての情報を集め、天気予報をよくチェックして、決して無理をしないことが重要です。

この日は職場の写真部の仲間より一日早く涸沢に入り、一人で奥穂高岳(3,190m)へと向かいました。涸沢カールを取り巻く穂高連峰の岩峰、雪渓、カラフルなテント、それに紅葉が加わり、どこを切り取っても写真になる見事な風景がひろがっています。眺望を楽しみながらザイテングラードを登り、約3時間で穂高山荘に着きました。山荘から奥穂高岳の頂上へは、約50分のコースタイムですが、今までの様相とは異なり、いきなり梯子で登り始め、所々に鎖もつけられた岩場もあって慎重に登ります。ついに日本第3の高峰の山頂に到達!穂高神社の山宮が祀られた祠もあります。ジャンダルムも昨日降ったという雪をうっすらと被って“威風堂々”と間近に聳えていました。南東には吊り尾根の向こうに前穂高岳が、北には北穂高岳を越えて槍ヶ岳への稜線が見え、南西にはジャンダルムをはじめとする峻険な稜線が西穂高岳へと続いています。私は北アプスではこの奥穂高岳からジャンダルムを越えて西穂高岳への縦走だけは残念ながら技量不足で未だに歩いていません。それだけに“あこがれ”も相俟ってしばし、この縦走路に見とれてしまいました。

写真とエッセイ 後藤 はるみ

1938年 東京に生まれる
1963年 東京理科大学理学部卒業後、代々木病院検査室勤務を経て東京保健会・病体生理研究所、研究開発室勤務
1978年 東京四谷の現代写真研究所に第3期生として、基礎科、本科1、本科2、専攻科、研究科で7年間写真を学ぶ。
1984年 写真家・竹内敏信氏に師事、現在に至る
1999年 病体生理研究所定年退職

・日本山岳会所属 ・エーデルワイスクラブ会員
・全日本山岳写真協会 会員
・写真展「視点」に3回入選
・全日本山岳写真協会主催の写真展に毎年出品
・その他、ドイフォトプラザ等でグループ展多数