2006年9月号(第52巻9号)

心に残る、山と花

立山とチングルマ

チングルマはバラ科の植物で花期は7~8月、南アルプス以北の中部地方、関東地方北部、東北地方、北海道の各高山帯の雪渓の縁や砂礫地に生える落葉小低木です。高さ3~10cmで群落をつくることが多いです。葉は長さ2~5cm、花は帯黄白色で枝先に1個ずつつきます。花柱は糸状で花が終わると伸びて長さ3cmほどになり、はじめはよじれていますが、しだいにほぐれて風にのって飛び散ります。名前の由来は羽毛状の白い毛のついた種子がリング状に並び、これが稚児車に似ており、それが訛ってチングルマになったといわれています。高山植物の中では知名度が高く、よく見かけます。

2003年秋、山仲間と紅葉の写真を撮りに立山に行きました。しかし、室堂についた時点で、今年はだめだと分かりました。紅葉の時期もその年によってかなり異なりますが、今年は紅葉になる前に雪が降ってしまい、紅くならないうちに終わってしまったとのことでした。他の被写体を探そうとその日はみくりが池に泊まり、翌朝、剣御前(別山乗越2,740m)に向けて出発しました。途中、雷鳥平のキャンプ場を過ぎたあたりから、あの、チングルマの花が咲き終わった後の穂の群落となり、風に吹かれて佇んでいました。バックにはうっすらと雪を被った立山三山(右から雄山3,003m、大汝山3,015m、富士ノ折立2,990mと続く)が聳えています。紅葉にはめぐり会えませんでしたが、日本三霊山としても有名な立山は、稚児車を従えてそれなりの風格を持っていました。

写真とエッセイ 後藤 はるみ

1938年 東京に生まれる
1963年 東京理科大学理学部卒業後、代々木病院検査室勤務を経て東京保健会・病体生理研究所、研究開発室勤務
1978年 東京四谷の現代写真研究所に第3期生として、基礎科、本科1、本科2、専攻科、研究科で7年間写真を学ぶ。
1984年 写真家・竹内敏信氏に師事、現在に至る
1999年 病体生理研究所定年退職

・日本山岳会所属 ・エーデルワイスクラブ会員
・全日本山岳写真協会 会員
・写真展「視点」に3回入選
・全日本山岳写真協会主催の写真展に毎年出品
・その他、ドイフォトプラザ等でグループ展多数