2006年5月号(第52巻5号)

心に残る、山と花

アマギシャクナゲ

アマギシャクナゲは伊豆半島の山地にのみ生育する地域限定種の植物です。常緑低木で、高さは4~6mほどになり、晩春から初夏の花期には美しい花をつけます。アズマシャクナゲに近縁ですが、花冠は5裂するもののほか、6裂や7裂のものが混じるのが特徴です。また、他のシャクナゲに比べて大木になるようで、中には6~7mもの高さのものもありました。山歩きをしていると、時々シャクナゲを見ることが出来ます。キバナシャクナゲ、ハクサンシャクナゲ、アズマシャクナゲ、ヤクシマシャクナゲなどがありますが、その中で群落が見事だったのは奥秩父の十文字峠(1,970m)で、宿泊した十文字小屋の周辺は色鮮やかなアズマシャクナゲの花、花、花で、余りの見事さに思わず歓声を上げてしまいました。

また、2005年のウェストン祭に島々宿から岩魚止小屋、徳本峠を越えて上高地に至るコースを歩いていて、徳本峠登山口の近くで後ろから他の登山者から声をかけられ、斜面の上を見ると、シャクナゲの群落です。一同、思わず「わ~っ!」と歓声をあげしばらく立ち止まって見とれていました。今年は十年に一度の見事な群落だといいます。上高地には何度も来ていますが、シャクナゲを見たのはこれが初めてでした。しかし、残念ながら少し距離がありすぎ、私のレンズでは届きませんでした。

伊豆半島の中心部にU字形に連なる山地は天城山と総称され、日本百名山にも数えられている名峰です。伊豆急行線伊東駅からバスに乗り、天城高原で降りて、万二郎岳(1,300m)を目指して樹林を1時間ほど登り詰めると山頂に着きます。そこから天城山の最高峰万三郎岳(1,406m)に向かって進み、石楠立に至ると、アマギシャクナゲの群落が出迎えてくれました。伊豆半島の山地にのみ生育する特産、しかも満開とあって、感激もひとしおでした。その感激を写真に収めました。

写真とエッセイ 後藤 はるみ

1938年 東京に生まれる
1963年 東京理科大学理学部卒業後、代々木病院検査室勤務を経て東京保健会・病体生理研究所、研究開発室勤務
1978年 東京四谷の現代写真研究所に第3期生として、基礎科、本科1、本科2、専攻科、研究科で7年間写真を学ぶ。
1984年 写真家・竹内敏信氏に師事、現在に至る
1999年 病体生理研究所定年退職

・日本山岳会所属 ・エーデルワイスクラブ会員
・全日本山岳写真協会 会員
・写真展「視点」に3回入選
・全日本山岳写真協会主催の写真展に毎年出品
・その他、ドイフォトプラザ等でグループ展多数