2006年3月号(第52巻3号)

心に残る、山と花

ハナネコノメ

ハナネコノメはユキノシタ科ネコノメソウの仲間で、どれも花が地味で目立ちませんが,本種は萼裂片が白いのでこの仲間のうちでは最も花らしい花のひとつといえます。花茎は約5cm、花も直径5mmととても小さいです。花期は3~4月で、ほかの野草に先駆けて渓流沿いの苔むした岩の上などに花を咲かせます。この仲間の裂開した果実の形が、上から見ると、細い線が一本横に入っていて、ネコの昼間の目に似ていることからネコノメソウの名があるそうです。花の様に見えるのは直立した萼裂片で、はじめは白色で美しいのですがだんだん淡緑色に変わります。葯が紅色なので、萼裂片の白色との対比が目立ち美しいです。

高尾山の日影沢には3月半ば、山の仲間とこのハナネコノメの撮影に出掛けました。派手な花ではないので、それと注意していないと見過ごしてしまいます。仲間の一人が、山の帰り道に偶然に見つけ、とても可愛らしかったので是非次回は写真を撮りに行こうと計画したのです。この花を目当てに訪れるのは私たちだけだと思っていたら、カメラ、三脚を持ったグループが花を探して歩いていたので、この地味な花にも興味を持つ方が結構いるのだと思って嬉しくなってしまいました。

写真とエッセイ 後藤 はるみ

1938年 東京に生まれる
1963年 東京理科大学理学部卒業後、代々木病院検査室勤務を経て東京保健会・病体生理研究所、研究開発室勤務
1978年 東京四谷の現代写真研究所に第3期生として、基礎科、本科1、本科2、専攻科、研究科で7年間写真を学ぶ。
1984年 写真家・竹内敏信氏に師事、現在に至る
1999年 病体生理研究所定年退職

・日本山岳会所属 ・エーデルワイスクラブ会員
・全日本山岳写真協会 会員
・写真展「視点」に3回入選
・全日本山岳写真協会主催の写真展に毎年出品
・その他、ドイフォトプラザ等でグループ展多数