2005年12月号(第51巻12号)

スペイン紀行

アストルガにて

ペン+水彩(23.8×19.2cm)

アストルガはローマ時代から交通の要衝として栄えた街で,サンチャゴ巡礼の賑わいとともに発展して来た。

大聖堂は15世紀末にゴシック様式で建設が始められたが,18世紀,バロックの時代に完成したので,さまざまな様式の混淆が見られ,必ずしもそれらがよく調和しているとは思えない。ファサード(正面入口)の左右に立つ双塔の色が全く異っているのも奇異な感じがする。

奇異といえば,大聖堂の隣のガウディが設計した司教館もそうである。絵ではその一部しか見えないが,まるで城のようなその奇抜なデザインに教会側が難色を示し,ガウディは建築を中途で止めてしまう。その後,他の建築家によって完成されたが,肝心の司教は恥ずかしがって,とうとう入居しなかった。この建物は今では巡礼博物館になっている。

巡礼の道はアストルガから山道に入り,最後の難関のセブレイロ峠に向う。最終目的地のサンチャゴ・デ・コ ンポステーラまではまだ200kmを超える道程である。

ちなみに,現代の巡礼者は全行程800kmのうち,徒歩で100km,自転車でなら200km以上を辿れば巡礼証明書を貰える。私たちのようにバスや車ばかりでは何も貰えない。

スケッチとエッセイ 武田 幹男

昭和7年生まれ
薬学博士元・田辺製薬株式会社 有機化学研究所長 常務取締役
※絵の略歴 定年退職後、 水彩スケッチを始める
山と渓谷社「山のスケッチコンテスト」準特選入賞
2002年、個展を開催 楽風会 所属
※山の略歴 元・関西山岳会会員
現在はネパール・ヒマラヤのトレッキングなどを楽しむ