2005年9月号(第51巻9号)

スペイン紀行

レオンのパラドール

ペン+水彩(23.8×19.2cm)

ブルゴスから巡礼の道をさらに西に進むとレオンに着く。レオンは旧レオン王国の首都で,街全体が中世の面影を色濃く残している。ゴシック様式の大聖堂とフレスコ画が美しいサン・イシドロ教会が名高いが,サン・マルコスのパラドールも見逃すことが出来ない。

パラドールとはスペイン独自の国営ホテルで,古城や修道院などの歴史的な文化財を修復して活用しているもので,現在,全国に約90のパラドールがある。その中でも,このサン・マルコスのパラドールは最大の規模をもち,五つ星のホテルとされている。その割に値段も手頃で人気が高く,予約をとるのが難しいが,幸い,私たちはここに泊まることが出来た。

この建物は1152年,最も巡礼の盛んであった時期に,巡礼者の救護所として建られたもので,後に,サンチャゴ騎士団のための修道院となった。現在の形が完成されたのは18世紀になってである。

中庭をとり囲む上下二段の石造りの回廊やサロンなどには中世のたずまいがそのまま残されていて,格調の高い家具や調度品も素晴らしい。ルネッサンス様式の正面入口の上には,馬にまたがり,イスラム軍と戦うサンチャゴ(聖ヤコブ)の見事な彫刻があり,入口の左右,百メートルにもおよぶ外壁も圧巻である。

スケッチとエッセイ 武田 幹男

昭和7年生まれ
薬学博士元・田辺製薬株式会社 有機化学研究所長 常務取締役
※絵の略歴 定年退職後、 水彩スケッチを始める
山と渓谷社「山のスケッチコンテスト」準特選入賞
2002年、個展を開催 楽風会 所属
※山の略歴 元・関西山岳会会員
現在はネパール・ヒマラヤのトレッキングなどを楽しむ